1926年、島根県の津和野で宿屋の息子として生まれた安野光雅。子どもの頃から空想することが大好きで、床に置いた鏡の中の世界を地下室と見立てたり、学校の窓から運動場で遊んでいる子を眺めながら、何を話しているかセリフをつけて遊んだりしていたそうです。また、絵を見ること、描くことに夢中で、幼いころから「絵描きになりたい」と考えていたといいます。
父親の死後、上京し、図工教師・講師を経て、教科書制作、装丁など出版の仕事に携わりました。同時に、独学で絵の勉強も続けていたそうです。そんな中、教え子の父という縁で出会った福音館書店の松居直から、絵本を描くよう勧められます。ストーリーを書くのが苦手だという安野に、「文字はなくてもいい」という松居の後押しで誕生したのが、初めての絵本『ふしぎなえ』でした。その後、『もりのえほん』『ABCの本』『旅の絵本』など、見るものを驚かせる絵本を次々と発表していきます。元々空想好きだったうえ、たくさんの本を読んで得た知識が、豊かな発想力へとつながっていったのでしょう。
安野の生み出した作品は、錯視やだまし絵、隠し絵などを取り入れているものもあり、眺めていても飽きず、まるで自分がその不思議な世界に入り込んだかのような気分になります。また、描かれる情景に織り込まれたストーリーやキャラクターたちの表情には遊び心あふれ、見るたびに新たな発見があります。
晩年の著書『かんがえる子ども』(福音館書店、2018年)では、「発見や創造の喜びをわかち合い、迷路のようなところへ誘いこんで悔しがらせる。そんなおもしろい本はできないものか」と考えて絵本を作ってきたと語っています。創作意欲は衰えることなく、94歳で亡くなる直前まで新たな絵本を発表し続けました。
インターネットが普及した結果、簡単に答えを手に入れられる今の時代にこそ、子どもには、自分で考えること、そして自分で答えを見つけることの喜びを味わうことができる、安野光雅が残した絵本に出会ってほしいと願っています。
令和8年5月 蔵書構成検討委員会 児童グループ



