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新聞・雑誌がお手本だった

 1948(昭和23)年に『美しい暮しの手帖』(現:『暮しの手帖』、暮らしの手帖社)が創刊、食糧事情の向上とともに、家庭の食卓が豊かになってきたこの時代、新聞・雑誌は多くの料理を豊かな生活の憧れとともに、私たちに教えてくれました。
 1957(昭和32)年に放送開始されたNHKの「きょうの料理」に出演していた土井勝をはじめとする講師達により、テレビで家庭の味のレシピやコツが紹介され、テキストにも多くの料理を繰り返し掲載し、家庭の料理のお手本になりました。

『わが家の夕めし』

アサヒグラフ/編 朝日新聞社 1986(昭和61)年

  平成12年に休刊した『アサヒグラフ』の最終ページに連載された家庭の夕食の風景。昭和42年から20年続いた連載から、選ばれた百人の有名人の夕食が掲載される。
  遠藤周作の「梅干しもゼイタク」と題された夫人と二人の晩飯、土井勝の「やはりおふくろの味」が用意された家族の食卓といった写真は、当時の家族のあり方も見えるようで興味深い。カラー写真の食卓のアルバムをめくるように、多少気取ったよその家の普段の食事の風景を見ることができる。

『おばあちゃんのおやつ』

朝日新聞東京本社学芸部/編 朝日新聞社 1986(昭和61)年

  朝日新聞家庭面に昭和57年から5年間連載された記事を元に、再度取材してまとめられたもの。
  全国のおばあちゃんから教わったおやつの作り方と、実際に作った感想、おやつの思い出、昔の人の知恵等も掲載する。作りやすい分量であっという間にできる、春のおかし―ひなあられは、残りご飯を干して油で揚げて、みつにからめて作る。戦時中貴重だった油を使ってやわらかく仕上げた話が添えられている。併載の「ふるさとの行事食」も懐かしい。

画像:『おそうざい十二カ月』

『おそうざい十二カ月』 

小島信平/[ほか]著 暮しの手帖社 1981(昭和56)年

  昭和21年に創業した暮しの手帖社が刊行する雑誌『暮しの手帖』は、衣食住を豊かで美しいものにすることを目指した内容で、戦後の日本の家庭のすがたに影響を与えた。
この本では、『暮しの手帖』に連載された中から選ばれた201もの家庭料理の作り方が、四季別に並ぶ。料理を担当した小島氏は、大阪の懐石料理店「生野」の主人。プロの料理人である氏に、家庭向けの「おそうざい」を手がけてもらう交渉や、スタッフによる試作の様子などが記されたあとがきも興味深い。巻末に材料別総索引と料理別総索引あり。

画像:『テレビ料理人列伝』

『テレビ料理人列伝』

河村明子/著 日本放送出版協会  2003(平成15)年

  昭和32年に始まり、半世紀以上に渡って日本のお茶の間に流れ続けている「NHKきょうの料理」。時代と共に進化を続けて来た番組の歴史は、そのまま日本人の食生活の歴史でもある。出演してきた料理人たちの思い出を、当時のディレクターだった著者が綴っている。
家庭料理は愛であると語る河野貞子、季節や環境で味付けは変わるという信念から、分量を数字で表すことを拒んだ辻嘉一など、撮影エピソードからは講師たちの料理に向ける真摯な思いが伝わってくる。

画像:『伝えていきたい日本の味』

『伝えていきたい日本の味』

栗原はるみ/著 扶桑社 2009(平成21)年

  ふつうの専業主婦から料理家となった著者が、忙しく働くなか大切にしてきたことは「どんなに忙しくても家族のごはんをおろそかにしないこと」であった。
その栗原家の食卓にあがる「豆腐ラザニア」や「厚揚げのピリ辛ごま煮」など、どこか一味違う料理がこの本には掲載されている。
また、作り方や材料もシンプルで手に入りやすいものばかりである。調理のコツやレシピの考えがわかる一言があることで、柔軟にアレンジでき、作ってみたい気持ちにさせてくれる。「残したい日本の道具」のエッセイも収録。

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