浦安市立図書館

図書館員が選んだ海外の画家の紹介

図書館員が選んだ海外の画家の紹介です。


画像:オキーフの家

オキーフの家

マイロン・ウッド/写真 クリスティン・テイラー・パッテン/文 メディアファクトリー 2003年

オキーフがニューメキシコで暮らした二つの家のモノクロの写真集。作家の絵のモチーフの一つ、鹿の骨が飾られた玄関や砂漠の景色は、自然の荒涼たる空気を伝える。オキーフが作品を通して表現しようとした“なにか”が見えてくるだろう。
西部を描いた作品が抽象画のように美しい『オキーフ画集 イン・ザ・ウエスト』(リブロポート)や、若い時代に描いた花の作品が荒々しい自然を写している『オキーフ画集 花』(リブロポート)もあわせて見たい画集である。                 

画像:マグリット

マグリット光と闇に隠された素顔 

 森耕治/著 マール社 2013年

マグリットの作品は、雲が浮かんだ昼間の空の下に街灯がついた夜の家や、空中に浮かぶ黒ずくめの大勢の紳士、パイプの絵なのに「これはパイプではない」と但し書きがしてある絵など、これぞシュルレアリスムと思わせる幻想的で神秘的な世界観で、一度見た者の心に強い印象を残す。では、マグリットという画家は、どのような人物なのか? ベルギーに生まれたマグリットは、幼少期に起こった母の自殺で心に傷を負う中、戦争に従軍し、生涯一人の女性と添い遂げた。本書は、マグリットの人生を、写真などの資料とともに辿ることのできる一冊である。

画像:ターナー

ターナー(BSSギャラリー世界の巨匠)  

ジョン・ウォーカー/著 千足信行/訳 美術出版社 1991年

「トラファルガーの海戦」で知られるイギリスの風景画家J・M・W・ターナー。プライバシーを重んじたため、伝記が少ない画家ではあるが、本書は、当時の文献を調査し生涯の足跡をたどった、貴重な一冊である。初期は、細心なスケッチをもとに描かれた作品が多く、油彩に不慣れな時期のものとして解説されている「海上の漁師」に描かれた月の裏側へとたなびく雲の描写は興味深い。後期の「洪水のあとの朝」の抽象画ともいえるタッチは、のちの印象派に通じるものがある。産業革命の象徴である鉄道を賛美したとされる「雨、蒸気、スピード」に描かれた黒いうさぎが表す象徴に何をみるかは、鑑賞者にゆだねられている。

画像:シャガール

シャガール天使とぼくのあしおと  

ダヴィッド・マクニール/著  宮下規久朗/監訳 
惣田くみ子/訳 西村書店 2009年

幻想的な深い青に包まれ、優しく抱き合うカップルや花束…。「パレード」など多くの絵画やステンドグラス、天井画も手掛けたマルク・シャガール。 この本は、シャガールがアメリカに亡命中に生まれた息子によるエッセイである。幼少期の彼の目に天使のように映っていたシャガールとの思い出が、鮮明に記されている。シャガールの再婚した妻への憎悪も描かれ、シャガールの隠れざる影の部分が、一連の暗い傑作作品につながっていたことがわかり、作品鑑賞の面白味が増すだろう。

画像:レオナルド・ダ・ヴィンチ

君はレオナルド・ダ・ヴィンチを知っているか  

布施英利/著 筑摩書房 2005年

人類で最も偉大な芸術家であり、人類で最も偉大な科学者でもあったレオナルド・ダ・ヴィンチ。ルネッサンス時代のイタリアに生まれ、フランスで67歳の生涯を閉じた一人の天才の魅力を、様々な角度から解き明かす。 師匠の絵の片隅に描いた、奇跡のような天使、遠近法を駆使した処女作「受胎告知」、息をのむほどに美しい手の描写、そして名画「モナ・リザ」の本当の魅力など、作品ひとつひとつを丹念に紐解き、ダ・ヴィンチの生涯を辿る。本書に掲載された図版はモノクロで小さいため、画集を傍に置いて読むと一層楽しめるだろう。

参考
『レオナルド・ダ・ヴィンチ』 パトリシア・エミソン/著 西村書店 2014年
『ダ・ヴィンチ全作品・全解剖。』 ペン編集部/編 阪急コミュニケーションズ 2009年 
『レオナルド・ダ・ヴィンチの素描』裾分一弘/編集・解説 岩崎美術社 1986年

画像:リネア モネの庭で

リネア モネの庭で  

クリスティーナ・ビョルク/文 レーナ・アンデション/絵 福井美津子/訳 世界文化社 1993年

花や植物が好きなリネアという少女が、モネと美術に詳しい元庭師のブルームさんとともに、フランスのジヴェルニーにあるモネの庭を訪れるという子ども向けに書かれた物語。堅苦しくなりがちな美術史や画家の生涯というテーマも、子どもの視点で描かれると親しみやすく理解しやすい。読者はパリの美術館でモネの傑作『睡蓮』を鑑賞したり、モネの庭を歩いてみたりと、リネアと一緒に旅行しているような気分が味わえる。

画像:国立西洋美術館

国立西洋美術館 公式ガイドブック 

国立西洋美術館/企画・監修 淡交社 2009年

『国立西洋美術館 公式ガイドブック』のp.37にハンマースホイとういう画家の作品が掲載されている。ヴィルヘルム・ハンマースホイ(1864-1916年)はデンマークを代表する作家の一人。生前はヨーロッパで高い評価を得ていたが、没後、急速に忘れ去られる。色調が抑えられた静謐な室内画を多く描く。日本では国立西洋美術館所蔵の『ピアノを弾く妻イーダのいる室内』を見ることができるが、この作家を紹介する資料が少ないのが残念である。

掲載
『世界美術大全集 西洋編』小学館 1993年第23巻 挿図231 
『世界美術大全集 西洋編』小学館 1996年第24巻 挿図197
『国立西洋美術館 公式ガイドブック』国立西洋美術館/企画・監修 淡交社 2009 p37
『西洋美術史 (朝日おとなの学びなおし!)』国立西洋美術館編 朝日新聞出版 2013p167

展覧会図録
『REVE ET REALITE(オルセー美術館展 19世紀の夢と現実)』 
高橋朋也/編集 日本経済新聞社 1999年 p225

装丁画
『半島』松浦寿輝/著 文春文庫 2007年

特集
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