日本の総理大臣あのとき誰が決断したか2
日本の総理大臣
あのとき誰が決断したか−2−
「田中角栄とその時代 駕籠に乗る人担ぐ人」
早坂茂三/著 PHP研究所 2016年
(集英社1994年刊行『駕籠に乗る人担ぐ人』の改題)
今もなお関連する書籍が出版され、何かと取り上げられる強いインパクトを放った第64・65代総理大臣田中角栄。その彼のもとで23年間敏腕秘書として名を馳せた筆者が、彼をはじめとして周囲の政治家たちも描いたノンフィクションです。時を置いた今だからこそ見えてくる田中角栄を感じてみてはいかがでしょうか。
「総理の妻 三木武夫と歩いた生涯」
三木睦子/著 日本経済評論社 2011年
三木武夫首相の夫人、睦子さんへのインタビューを通じて、三木首相の実像を描きます。ロッキード事件の収拾に取り組み、すさまじい権力争いの中で筋を通した政治家というイメージがありますが、裏では、それとは別の人間関係・信頼関係があり、見方が少し変わります。30歳で大臣に就任するなど、若くから中枢で活躍しただけに、お金もないのに書生や居候が常に何人もいるなど、奥さんにしかわからない苦労も多かったようです。
「祖父大平正芳」
渡邊満子/編 中央公論新社 2016年
日本初の衆参同日選挙の最中に急逝した大平正芳は、政治には限界があることへの深い洞察、政治を常に公的なものととらえた考え方など、いつの時代でも政治に求められる普遍的なものを備えていた政治家であったと再評価されています。本書では孫娘の視点でその素顔が語られています。家族への深い愛情と、関わり合いのある人々への気遣い、そして政治に対する真摯な態度が様々なエピソードにより浮かび上がってきます。
「村山富市回顧録」
村山富市/著 薬師寺克行/編 岩波書店 2012年
野党に転落した自民党が、政権奪回のため社会党と手を組むという「サプライズ」により、村山政権が誕生しました。長い眉毛がトレードマークで「トンちゃん」の愛称で親しまれた村山富市は、片山哲以来、47年ぶりの社会党委員長の総理でした。本書ではインタビューに答える形で社会党のこと、政権時代のことを赤裸々に語っています。常に社会党らしさを考えながらも、現実的に政治を進めていた政治家であったことがよくわかります。
「橋本龍太郎外交回顧録」
橋本龍太郎/述 五百旗頭真・宮城大蔵/編 岩波書店 2013年
運輸大臣、大蔵大臣、通商産業大臣、そして首相と、様々な立場で、日本の大きな外交問題に直面した橋本龍太郎。首相退任後2001年から2002年の間に3回にわたって行われたインタビューをまとめたこの回顧録は、湾岸戦争や日米貿易摩擦、ペルー大使館人質事件など、冷戦後の日本外交の格闘を振り返った1冊といえます。インタビュー中にメモを一切見ることなく、最後まで具体的に語ったというインタビュアーの言葉が印象的です。
「小泉政権―非情の歳月」
佐野眞一/著 文藝春秋 2006年
(2004年刊行『小泉純一郎―血脈の王朝』の増補改訂・改題)
戦後3番目に長く首相の職にあった小泉純一郎。常に高い支持率を誇ったこの政権を支えた3人の人物がいました。議員初当選から秘書として仕え、マスコミ対応を一手に担った主席秘書官・飯島勲。決して表舞台には現れず、しかし唯一首相が助言を聞き入れ、常に心の拠り所となっていた実姉・小泉信子。そして「変人宰相」の名付け親、田中真紀子。本人及び周囲への取材に基づいて描くことで、小泉政治とは何だったのかを問います。
「民主の敵 政権交代に大義あり」
野田佳彦/著 新潮社 2009年
2009年から2012年まで政権を担当した民主党。その最後の首相を務めた野田佳彦の著書。幼いころから政治に興味を持ち、やがて松下政経塾を経て、本格的に政治活動を行います。それまでの自民党の行ってきた経済政策による格差の拡大、官僚の質の低下、自衛隊の海外派遣目的の不明確さなどを独自の目線で指摘し、今後の政策の改善策を述べています。政権交代こそが日本を変えると信じていた信念の1冊。
「新しい国へ 美しい国へ完全版」
安倍晋三/著 文藝春秋 2013年
権力をもつ人が何を目指しているのかは、最終的には本人の書いたものによるしかありません。けれど、選挙公約のようなものを除くと、それが書籍になり、ましてベストセラーになるのは珍しい。この本はそういう意味では貴重です。支持するにせよ、批判するにせよ、まずは読むことから始まるのではないでしょうか。面白い、というよりは読むとお勉強をした気になるというのは、ちょっと教科書のような書き方だからかもしれません。