まどさんを知る本
『まどさん』
阪田寛夫/著 筑摩書房 1993
動物も植物も石ころも、みんな同じ仲間。口先でそういう人は多いけれど、まどさんは本気です。では、その不思議な感性を育んだものは何だったのでしょう?
5歳から9歳まで祖父と二人で暮した寂しい子どもは、親の期待から土木技師になり、召集されて戦場にも行きました。3年の歳月をかけ、まどさんが育った台湾へも渡った著者が見出した、詩人まど・みちおの伝記小説です。
『すべての時間(とき)を花束にして 〜まどさんが語るまどさん〜』
まど・みちお/著 柏原怜子/聞き書き 佼成出版社 2002
90歳を超えたまどさんのことばを児童文学者・柏原怜子が聞き書きした本。背負われて川を渡った最初の記憶、家族・親友、時代のこと…。豊かな感性、特に幼いころの記憶やまどの抽象画に見られる色彩感覚の鋭さには驚かされます。そして、詩への思い、生きもの・いのちに対する温かでまっすぐなまなざし。
平易なことばでありながら、研ぎ澄まされた一語一語から自然体の人柄がにじみ、まどさんがやさしく語りかける声が聞こえてくるようです。
『まど・みちお −研究と資料−』
谷悦子/著 和泉書院 1995
まど・みちお研究の第一人者による詳細な研究論と資料集。童謡論、表現論の他、国際アンデルセン賞の受賞をめぐる経緯も紹介されており、まどさんファンには興味深い1冊となっています。
資料篇では、まどさんの描いた抽象画や、インタビュー、講演録をまとめた「自作自註」を収録。詩への思いや詩作の背景が語られ、その謙虚で誠実な人柄がうかがえます。
『まど・みちおのこころ −ことばの花束−』
中村桂子ほか/著 佼成出版社 2002
自然・宇宙・あらゆるものすべてにいのちを吹き込むまど・みちおの世界。その世界を、生命科学者・理論物理学者・住職・作家などの視点から語られた評論集。理論物理学者として宇宙を研究している佐治晴夫氏は「宇宙の研究というのが、最終的に求めているものと、まど・みちおさんが詩人として求めているものとの間に、共通点がある。」といいます。そのように読むと、今までは違って見えていたものたちがつながっていくのが実感でき、まどさんの詩の魅力に、あらためて驚嘆します。
『まど・みちお ぞうさんの詩人』
河出書房新社 2000
日常の様々なことに普遍性を見つけ出す詩人、まどみちお。やさしくて深い彼の詩に、自分を見失いがちな大人こそ出会ってほしいと思います。
本書では、まどさんの55遍の詩とエッセイが紹介されています。加えて阪田寛夫氏との対談や谷川俊太郎氏、安野光雄氏らのシンポジウム、工藤直子氏や河合隼雄氏、まどさんを「一流の科学者」であると語る毛利衛氏など、そうそうたるメンバーにより、彼の作品の魅力が余すことなく語られています。
『まど・みちお全詩集』
伊藤英治/編 理論社 1994
1992年にこの本の初版が刊行されたとき、2編の戦争協力詩が収録されたことが、新聞等で報道されました。それほどに、このことは事件だったのです。本人すらも記憶になかったというこの詩の収録の経緯は、本書のあとがきに、詩人自身によって記されています。彼のほぼ生涯の詩作を展望する本書ですが、過ちを直視する詩人の勇気が、通奏低音のように響くことによって、全く新たな価値を得ているといえるでしょう。