まどさんの詩の本
『くまさん』
童話屋 1989
世の中のあらゆるものは、それぞれに存在する意味をもち、お互いに助け合っていると言うまどさん。虹や雨、くまやぞう、漬物のおもしや石けんまでも「自分に生まれてきたこと」を喜んでいるというのです。たとえば表題作「くまさん」は「みずに うつった いいかお みて そうだ ぼくは くまだった よかったな」と、くまに生まれてきたことを喜んでいます。
リズムが心地よく、余分な言葉が削り取られた詩は、読むほどに心がやさしく、澄みわたってきます。「自分が自分であることの喜び」を実感できる1冊です。
『せんねんまんねん』
工藤直子/編 童話屋 1990
『のはらうた』の詩人・工藤直子氏が、自分の好きなまどさんの詩を選び、まとめたもの。「せんねんまんねん」「タンポポ」「するめ」「いちばんぼし」など42編を収録。
「せんねんまんねん」の詩の中にある“いつかのっぽのヤシの木になるために そのヤシのみが地べたに落ちる”というような、生命の繰り返しからはじまり、小さなものが、大きな深い宇宙へとつながってゆくイメージが広がり、選者の感性も楽しめる詩集です。
『てんぷらぴりぴり』
大日本図書 1968
まどさんが59歳のときに初めて出版した詩集。身近なもの、イヌや石ころ、スイカなどを題材に、純粋に、時にユーモラスに描き、初版から40年経った今も、多くの子どもたちに愛されています。
「てんぷらぴりぴり」のてんぷらを揚げる音は、ジュワーでも、パチパチでもなく、ぴりぴり。ツクツクホウシの鳴く声、シソの実の香り、油のにおい。この詩を口ずさめば、人それぞれに、母親が台所でてんぷらを揚げる姿を思い浮かべることでしょう。
『THE ANIMALS どうぶつたち』
美智子/選・訳 すえもりブックス 1992
1990年、国際アンデルセン賞の日本代表として、JBBY(日本国際児童図書評議会)はまどさんを推薦しました。当時、ほとんど英訳のなかった日本の詩を紹介するにあたり、JBBYは、自身も歌人であり、優れたことばの感性を持つ美智子皇后に翻訳を依頼しました。皇后の選による20篇の英詩で構成された本書は、困難な詩の翻訳という壁を乗り越えて、まどさんのことばの世界の魅力を十分に伝え、日本人で初めての作家賞受賞を後押ししたと評価されています。
「まどさんとさかたさんのことばあそび」(全5巻)
小峰書店 1992年〜2004年
「サッちゃん」の作者・阪田寛夫氏との競作。同じことばあそびでも、阪田さんがどことなく端正な、教養を感じさせるのに対し、まどさんの作品は、もっとのびやかに、純粋にことばを楽しんでいます。そんな中にも、機知のひらめきが感じられるところに、明治の人の洒落っ気を見るのは私だけでしょうか。例えば、本書の「ぼうは ぼう」。「ぼうの きかんぼう まるたんぼう」と、棒尽くしの啖呵を切る勢いは軽妙で、思わず口ずさみたくなります。
シリーズ一覧
『まどさんとさかたさんのことばあそび』
『だじゃれはだれじゃ』
『ひまへまごろあわせ』
『あんパンのしょうめい』
『カステラへらずぐち』
「まどさんの詩の本」(全15巻)
理論社 1994年〜1997年
身近な人へ贈る『家族と友だち』から、遠く宇宙の星たちと会話するような『宇宙はよぶ』。はては俳句よりも短い! と思うほど短い詩を集めた『まめつぶうた』など、まどさんのいろいろな世界が小さな詩集になった全15冊のシリーズです。こんなにいろんなテーマなのに、どれを読んでも、まどさんがそこにいるのを感じられるのが不思議です。
シリーズ一覧
『つぶつぶうた』
『かんがえる』
『にほんごにこにこ』
『地球ばんざい』
『むしいっぱい』
『宇宙はよぶ』
『ものいろいろ』
『家族と友だち』
『あのうたこのうた』
『鳥いっぱい』
『いきいき動物』
『花いっぱい』
『人間いきてる』
『よむうた』
『かがやけ木と草』