「社会」を考える
『働くニホン−不安の時代をどう生きるか』
日本経済新聞社／編 日本経済新聞社 2009
会社の管理職や若手社員、企業の経営者、求職中の人。みんなが逆境の中でがんばっている。私たちには、雇用問題を企業だけの責任とせず、日本の人材力やチームワークを生かして、会社と私たちが共に成長する新しい働く形を探すことが求められている。日本経済新聞の連載記事をまとめた本書は、様々な現場への取材を通して、私たちが力を合わせれば、働きがいのある明るい未来を見つけることができることを示している。
『日本の雇用−ほんとうは何が問題なのか』
大久保幸夫／著 講談社（講談社現代新書） 2009
現在大きな社会問題となっている雇用。その雇用不安の中で、我々はどのように働くのか。不安の原因には、経済の悪化、社員の企業への不信、正社員中心の制度疲労、労働者の知識不足と孤立などがあり、政府、企業、個人のそれぞれが出来ることを考えなければならない時代となっている。しかし著者は、むやみに不安を感じるのではなく、各人がこの時代を自分自身が成長できる契機と捉え、雇用について積極的に学んでいくことが重要であると説く。
『高齢社会日本の雇用政策』
ＯＥＣＤ／編著 明石書店 2005
ＯＥＣＤ(経済開発協力機構)は、加盟国の中で最も急速に少子高齢化が進む日本をモデルとして、雇用政策に関する研究を行った。本書はその研究報告の邦訳版である。少子高齢化が進めば働き手が少なくなる。結果として「現役世代」の負担が重くなる。負担を軽くするには、高齢者に少しでも長く働いてもらうことが重要だが、そのためにはどのような制度の整備が必要なのか。本書は私たちに、「働く」ことに対する意識や考え方を変革することを問いかけている。
『職場の法律は小説より奇なり』
小嶌典明／著 講談社 2009
派遣切り、名ばかり管理職、サービス残業など雇用労働問題が社会問題になっている今、規制改革の現場では何が起こっているのか。雇用する側と雇用される側の問題は何か。本書はこうした問題の解決に、基本となる法律に立ち返りながら考えてみてはどうかと問いかける。著者は労働法の専門家として雇用労働問題に従事した経験に基づいて書いており、法律が労務の現場でどのように解釈、運用され、現代社会の問題に繋がっているか、わかりやすく解説している。
『雇用再生−戦後最悪の危機からどう脱出するか』
山田久／著 日本経済新聞出版社 2009
日本はこれまで「終身雇用・年功序列」の「正社員中心システム」であったと言われている。しかし分析を行うと、実質的には終身雇用ではない「多様な正社員」による柔軟な労働があったことがわかる。著者は過去や欧州の「同一価値労働・同一賃金」などを検証し、雇用システムの短期および中長期の変革を提言している。
『ワーキングプア−いくら働いても報われない時代が来る』
門倉貴史／著 宝島社（宝島社新書） 2006
一生懸命働き続けているのに、生活保護水準の暮らしから脱却できない貧困層をワーキングプアという。統計データで社会的背景を解説するとともに、様々な原因でワーキングプアになった人々へのインタビューが多数掲載されており、富裕層であっても誰もがワーキングプアに陥る可能性があることがわかる。このような社会が続くと日本の将来はどうなるのか。皆で考えていかなければならない問題だと認識させられる。
『働く幸せ−仕事でいちばん大切なこと』
大山泰弘／著 WAVE出版 2009
「働く」という文字は「人」と「動く」を組み合わせて成り立っている。「人のために動く」ことが働くことであり、人の役に立って必要とされ、愛されることに、働く幸せがあると著者は説く。著者は、知的障がい者の雇用によって今注目を浴びているチョーク製造会社の会長。知的障がい者の雇用を続けて50年、著者による様々なエピソードがとてもあたたかい。
『雇用危機』
週刊ダイヤモンド／編 ダイヤモンド社 2009
本書は『週刊ダイヤモンド』の四つの特集をまとめたものである。時系列で読むと、これらの特集が書かれた約一年間の間に雇用危機や貧困の問題が深刻化していったことがよくわかる。 今日本で起きている雇用や貧困問題の実際が、統計やアンケート調査によって浮き彫りとなっている。雇用に関して今何が起こっているのか、私たちは何をすべきなのかを考えるために一読したい。
