「働き方」を考える
『自分の仕事をつくる』
西村佳哲/著 筑摩書房(ちくま文庫) 2009
いいモノをつくっている人は、働き方が違うはず。自称“働き方研究家”の著者が、八木保、柳宗理、宮田識、ヨーガン・レールといった人々を取材することにより、「いい仕事」とは何かを明らかにする。そこには自分が欲しいものを作り、それが社会にも必要とされるという、仕事の本質があった。私たちは惰性で与えられた仕事をしてはいないだろうか。仕事を「自分の仕事」とするにはどうしたらいいのか。働き方について考えるきっかけを与えてくれる。
『企業が求める人間力』
社会経済生産性本部/編 生産性出版 2006
オリエンタルランド、NTTデータ、キャノンなど、各業界を代表する企業の人事担当者が「人間力」について思うところを語った本。各企業の経営理念や求めている人間、採用後の人材育成などを知ることができる。これから社会人になる人や、すでに企業人として奮闘しながら能力を高めようとしている人にとって、自らの仕事や生き方について考える参考となるだろう。2007年刊行の2巻目には旭硝子、花王、カゴメなどが取りあげられている。
『私の仕事 私の働き方−72人の女性の現場報告』
働く女性のネットワーク「よこの会」/編著 講談社 2006
企業、職種、世代を超えて、働く女性の横のネットワークを育てようと設立された「よこの会」が、働く女性にインタビューをしたものの中から、72篇を選び加筆・修正したもの。様々な職歴、学歴、家族構成を持つ女性たちが登場するが、共通点は、とても前向きで積極的、自分をごまかさないで働き続けてきた、とても頼もしい女性たちということ。仕事を持つ女性、これから仕事をはじめようという女性を励ましてくれる。
『技能五輪メダリストの群像−ものつくり日本を支える若者たちの挑戦』
西澤紘一/著 オプトロニクス社 2008
3年前、2007年11月に浜松で開催された技能五輪国際大会。世界中から若者が集まって日頃の職業訓練の成果を競ったこの大会で、日本は金メダル16個を含む合計24個のメダルを獲得した。本書は、大会の技術代表を務めた著者が行った、メダリストや関係者へのインタビューをまとめたものであり、日本企業の高い技術力の源を垣間見ることができる。
『現場発 スローな働き方と出会う』
田中夏子・杉村和美/著 岩波書店 2004
より短期に、より多くの利益をあげることに価値が置かれる市場原理。年間自殺者は3万人以上。若者も含め、多くの人々には未来が見えない。こうした状況の中、それぞれの身の丈にあった方法で人間が大事にされる「スローな働き方」への試みが各地で広がっている。農村の女性たちの仕事起こし、スロータウン(まちづくり)の実践など、現場での取材を基に紹介する。
『キャリア・プランニングーあなたの未来をひらく「しごと学」講義』
山崎好裕/編著 中央経済社 2006
本書は、学者・コンサルタント・カウンセラーの執筆により構成されたオムニバス形式の本である。ここ最近は厳しい経済状況を反映し、「一生の仕事」に就くことが難しくなっているが、仕事に関する経験の連続(変化するプロセス)=キャリアを積極的に積むことは必要である。就職活動を控えた学生や、社会でこれからキャリアを積もうとしている人々に向けて、最も基本となる心構えや知識を非常にわかりやすく解説している。
『働く気持ちに火をつける−ミッション、パッション、ハイテンション!』
齋藤孝/著 文藝春秋(文春文庫) 2008
仕事がつまらないとき、仕事に疲れたと感じたときには、「ミッション、パッション、ハイテンション!」という呪文があるという。働く気持ちに火をつける起爆剤を見つけること(ミッション)、辛いことをポジティブに考えること(パッション)、才能を発揮するポジションを勝ち取るためのテンションの高さを得ること(ハイテンション)。著者は私たちに、気持ちの持ち方により仕事の好循環が得られると語りかける。
『若者と仕事−「学校経由の就職」を超えて』
本田由紀/著 東京大学出版会 2005
学校を卒業して就職する。以前は当たり前であったことが今はうまく機能しない。それはなぜか。著者はこの問題に取り組み、「学校経由の就職」と「教育の職業的意義(レリバンス)」という2つのキーワードを読者に提示する。学生が「働く」ことについて深く掘り下げる機会が少ない一方で、企業が即戦力を求めており、企業側と教育側で人材のギャップが発生しているのではないか。そうしたミスマッチが本書で浮き彫りになる。
『こんな働き方があったのか!』
就職情報研究所/編 NTT出版 2006
本書は、あるIT派遣企業のユニークなビジネスモデル、「新卒特定派遣」という働き方の実例を紹介している。働きながら学ぶ熱い意欲を持った若者たちのサクセスストーリーには、正社員・非正規社員の枠は存在しない。働く道は様々でも「自己実現したい」という個々の強い思いが、結果として社会全体の活力を高めることにつながるため、誰もが自分の成長を実感できる仕事にやりがいと魅力を感じている。高いモチベーションを持ち、スキルを身につけ、会社と社員の対等な関係が築かれた時、希望を持って働ける社会へと道は開ける。
『職業とキャリア』
八幡成美/著 法政大学出版局 2009
「職業についてじっくりと考えてもらう契機をつくることに狙いをおいている」という記述にあるように、本書は職業の歴史や、労働市場との関係、職業資格に関する考察などで構成され、職業とキャリアの問題がテーマとなっている。なかでも、仕事と生活の両立を実現させる方法の一つとして、自営業を取り上げている点に注目したい。 本書を契機として、キャリアを人間らしい生き方を高めるように実現する「もの」として捉えると、自分自身の職業について見つめなおすきっかけが与えられるのではないだろうか。
『キャリアデザイン入門 [T]基礎力編 [U]専門力編』
大久保幸夫/著 日本経済新聞社 2006
「キャリアデザイン」という言葉は、大学にその名を冠した学部まである一方で誰もがその意味を良く理解するまでには普及していない。本書では、「キャリアとは職務経歴であり、仕事に対する自己イメージ」であり、このようなキャリアを「会社任せではなく、自分自身が主体性を持って自立的に計画し、実行」していくことを、「キャリアデザイン」であると定義する。 [T]基礎力編では若手社員の、[U]専門力編では40歳前後からのキャリアデザインの方法を解説している。かけがえのない人生において、仕事との良い関係を作り、充実した自分だけのキャリアを作っていきたいという人に勧めたい。