はじめに
『ぐりとぐら』、『ぐるんぱのようちえん』、『だるまちゃんとてんぐちゃん』。
半世紀以上にわたり子どもたちに読み継がれ、今もなお人気のある絵本たち。子どもの頃親しんだという方も、多いのではないでしょうか。これらは福音館書店の月刊誌「こどものとも」として出版された代表的な絵本です。そして、「こどものとも」を創刊したのが、松居直です。
松居直は、芸術性の高い絵を配した物語絵本を目指し、芸術家を絵本作家として起用したり、新しい作家を発掘したりしながら、絵本を生み出していきました。また、海外の優れた絵本を翻訳、出版し、石井桃子とともに『ちいさなうさこちゃん』を日本に紹介しました。
幼いころ、母親に絵本を読んでもらった経験から、読書とは、耳からの言葉を体験することが一番の基本になるという考えのもと、絵本のよみきかせの大切さについて各地で講演し、浦安市立図書館にも、2003年と2004年に「子どもの本の講座」の講師として来てくださり、ご自身の経験から、絵本を読んであげることの大切さについて、お話してくださいました。
子どもの本について、自身の著書※の中で「子どもの頃から絵本や物語を通して、異文化を知ることは、子どもの世界を豊かにします。お話を通して、自分の外の世界を知ることにより、いろいろな生き物について、いろいろな価値観を理解することができるようになります。」と述べています。
松居直は2022年11月、96歳で永眠しました。その生涯の中で、子どもの世界を豊かにするたくさんの絵本を私たちに遺してくれました。
それらの絵本と、松居直の子どもたちへの想いを後世に受け渡していくことが、私たち図書館司書の使命であると感じています。
感謝と哀悼を込めて、日本の絵本の道を開いた松居直の業績を紹介いたします。
※『シリーズ・松居直の世界1 松居直自伝』(ミネルヴァ書房 2012)
2023年6月 蔵書構成検討委員会 児童分野