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冒険物語

リンドグレーンの初期の作品である「長くつ下のピッピ」や「やねの上のカールソン」の主人公たちは、常識や頭の固い大人たちにとらわれることなく、自分の思うままに生きる自由奔放さを持っていました。子ども向けの物語は教育的規範を示すべきだと考える風潮が強かった出版当時、リンドグレーンの書いた物語は教育学者などから多くの批判を受けました。けれども、自分の中にいる子どもを喜ばせるために書いたというリンドグレーンの言葉通り、子どもたちはこの新しい物語を歓迎し、主人公たちが繰り広げる“日常の冒険”を大いに楽しんだのです。

『長くつ下のピッピ』

大塚勇三/訳 岩波書店

小さな町のはずれの“ごたごた荘”にたった一人で住んでいる9歳の女の子ピッピ。左右色の違う長い靴下と足の倍の大きさの靴をはき、学校には行かずお行儀もめっぽう悪い。その上馬でもならず者でも軽々と持ち上げてしまう力持ち。金貨もどっさり持っていて、愉快に痛快に、どんなことだって一人でやってのける。
原作の初版は1945年。世界各国で翻訳され、子どもにも大人にも愛されてきたリンドグレーンの代表作である。シリーズに『ピッピ、船にのる』『ピッピ、南の島へ』がある。

画像:長くつ下のピッピ

『やねの上のカールソン』

大塚勇三/訳 岩波書店

リッレブルールはある日、屋根の上に住み、背中のプロペラで空を飛びまわる小さな太ったおじさん・カールソンと出会う。食いしん坊で自信家で自己中心的なカールソンは、蒸気エンジンを爆発させても、掃除機の中のゴミをぶちまけても、全く気にする様子もない。いたずら好きで、泥棒や家政婦をおばけのフリをしてやりこめる。
荒唐無稽でハチャメチャなカールソンだが、なぜか憎めない。抑圧された環境を打ち壊すカールソンは、東欧・ロシアでは絶大な人気を誇っている。シリーズに『やねの上のカールソンとびまわる』『やねの上のカールソンだいかつやく』がある。

画像:やねの上のカールソン

『名探偵カッレくん』

尾崎義/訳 岩波書店

平和な町で事件を探す名探偵志望の少年カッレくん。仲良しのアンデスとエーヴァ・ロッタにひやかされながらも事件を求めるカッレくんは、突如現れたエーヴァ・ロッタの叔父、エイナルの不審な行動に秘かに疑問を持つ。やがてエイナルを探す二人の男が現れ、彼らに犯罪の臭いを嗅ぎつけたカッレくんは、アンデスとエーヴァ・ロッタと共に事件を探り始めるが、とうとうその犯罪に巻き込まれることになってしまう。
『カッレくんの冒険』『名探偵カッレとスパイ団』と続く3部作は巻を追うごとに緊張感が高まり、本格的な冒険推理小説として楽しめる。

画像:名探偵カッレくん

『さすらいの孤児ラスムス』

尾崎義/訳 岩波書店

孤児の家を抜け出したラスムスは、アコーディオンを弾く風来坊のオスカルと出会って一緒に旅をする。ところがある時、水をもらいに寄った家で、強盗事件を目撃してしまい、犯人たちに命を狙われるようになってしまう。 幸せな家庭に落ち着くことに憧れる一方で、陽気な風来坊のオスカルに心を通わせるラスムスの真っ直ぐな心が胸を衝く。スリル満点の事件の後には、心温まる結末が用意されている。
リンドグレーンはこの作品で、1958年に国際アンデルセン賞を受賞した。

画像:さすらいの孤児ラスムス

『ラスムスくん英雄になる』

尾崎義/訳 岩波書店

ラスムスは田舎町の警官の息子。ある夜、親友のポントゥスと共に、泥棒の現場を目撃してしまう。それは、新聞にも載っていた有名な銀器泥棒の一味だった。見られたことを知った泥棒一味は、ラスムスの愛犬トーケルを閉じ込め、それをたてに口止めをしようとする。
勇敢で正義感溢れるラスムスは、様々な危険を冒してトーケルを救い出そうとする。舞台となるのは、美しい5月の白夜。日本人にはなじみがないが、薄明るい夜中の冒険は、想像しただけで胸が躍る。

画像:ラスムスくん英雄になる

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