ファンタジー物語
『ミオよわたしのミオ』
大塚勇三/訳 岩波書店
9歳のボッセの養親は子ども嫌いだったから、ボッセの毎日はあまり幸せでなかった。ある日、魔人を助けたボッセは「はるかな国」に連れてゆかれ、海に浮かぶこの美しい国で父親と巡り合う。ボッセは本当はミオという名の王子で、父王も永い間息子を探していたのだった。夢のように楽しい日々が始まるが、ボッセには恐ろしい騎士カトーと戦う運命が待ち受けていた…。北欧民話の雰囲気を漂わせる幻想的で美しい物語。
『山賊のむすめローニャ』
大塚勇三/訳 岩波書店
山賊・マッティス一家のローニャと敵対するボルカ一家の男の子ビルクは、偶然にも互いの危機を助け合うことになり、惹かれ合っていく。やがて、山賊同士の争いを嫌う二人は、住処を捨て、森で暮らそうと決意するのだった。
『ロミオとジュリエット』的な設定、魔物の棲むうっそうとした森での喜びと苦難、生と死など様々な対立を描きながらも、大自然の中で生命の息吹を全身でうけとめるローニャがキーとなって物語は大団円を迎える。リンドグレーン最後の長編。
『小さいきょうだい』
大塚勇三/訳 岩波書店
「むかしむかし、貧乏がひどかったころ」にはじまる4編の短編が収められている。孤児となって農場で働かされた兄妹は、冬の間だけ、雪の中を学校に行かせてもらえる。ある日、学校の帰り道に迷い込んだ「ミナミノハラ」では、もう寒さも、つらい事もなく、他の子どもたちといっしょに遊ぶことができるのだった。(「小さいきょうだい」)。
「ピッピ」のような、ゆかいな物語とは違う、貧しさゆえの悲しみを正面から扱った作品。
『はるかな国のきょうだい』
大塚勇三/訳 岩波書店
人は死んだら、どこに行くのだろうか。病弱なクッキーに、兄はいつも「ナンギヤラ」の話をしてくれた。そこには、健康な体と、豊かな暮らしがあるのだと。しかし、兄は事故で亡くなり、兄弟はやがて「ナンギヤラ」で再会する。楽しい生活もつかのま、そこでは暴君が人びとの暮らしをおびやかしていた。兄弟は共に戦い、傷つく。何度生まれ変わっても、悲しみは続くのかもしれない。それでも幸せを求める心が、私たちを励ますのだ。