旧きよき時代の子どもたち
リンドグレーンが生まれ育ったのは、スモーランド地方といって、スウェーデンの中でも貧しい農村地帯です。ここでの暮らしを下敷きにして「やかまし村」「エーミール」「おもしろ荘」などのシリーズが生まれました。描かれているのは、貧しいながらもつつましく楽しく暮らしている農村の生活。その中でリンドグレーンが自分を振り返って「遊んで、遊んで、遊びました」というように、家族の愛情につつまれてのびのびと育つ子供たちの姿は、終生変わらぬ、理想の子ども像だったのです。
『川のほとりのおもしろ荘』
石井登志子/訳 岩波書店
おもしろ荘に住むマディケンと妹のリザベットの四季を描く物語。リンドグレーンが少女時代をすごしたスモーランド地方の体験が下敷きです。遠足のつもりで屋根にのぼったマディケンは、鳥のように空を飛びたいと考えます。飛行機から傘でとびおりた人の話を思い出し、自分でもできるはず、と傘を広げて飛び降りるが・・・。
冒険好きで勇敢な女の子マディケンは、リンドグレーン自身と、マディケンと呼ばれていた幼なじみがモデルになっている。続編に『おもしろ荘の子どもたち』がある。
『やかまし村の子どもたち』
大塚勇三/訳 岩波書店
やかまし村には、家はたった3軒しかない。中屋敷にはリーサという妹と、ラッセとボッセの兄弟。北屋敷にはブリッタとアンナの姉妹。南屋敷にはオッレという男の子。この6人が、平和な農村の自然の中でのびのびと遊ぶ日常を描いた物語。シリーズに『やかまし村の春・夏・秋・冬』『やかまし村はいつもにぎやか』がある。
『エーミルと小さなイーダ』
さんぺいけいこ/訳 岩波書店
リンネベリア村にあるキャットフルト農場に住むいたずらっ子のエーミル。いたずらをしでかすたびに、作業小屋に閉じ込められ、そのたびに木彫りの人形を1つ作る。妹のイーダは、それがうらやましくてたまらない。
舞台となっているキャットフルト農場は、リンドグレーンの故郷スモーランドの農場を模して描かれている。いたずらっ子のエーミールは、リンドグレーンがとりわけ愛していたキャラクターで、3冊の本を書いた20年も後に、さらに3冊の本を出版した。
シリーズに『エーミールと大どろぼう』『エーミールとねずみとり』『エーミールと60ぴきのざりがに』(以上講談社)『エーミルのいたずら325番』『エーミルのクリスマス・パーティー』(以上岩波書店)がある。