紹介文
『竹久夢二抄』
尾崎左永子 平凡社
岡山に生まれ東京に上京し、苦学しながら自分の道を切り開いていった夢二は、50歳という短い生涯で多くの作品を遺した。自由奔放な生き方と作品に対しては、当時からも賛否両論であったが、誰の心にもある孤独と寂しさを埋めるため絵や詩を書き、いくつもの恋をしても、夢二の心は満たされることはなかった。没後70年以上が過ぎた今でも、見るものの共感を呼ぶのは、彼の表現しようとしたもの、求めていたものが人間本来の悲しみに根ざしているからではないだろうか。最後まで支援し続けた有島生馬はこう述べている。『夢二は明治大正の不滅な風俗画家だと信じ愛している』
『エドワード・ヤン』
ジョン・アンダーソン 青土社
2007年6月29日、映画監督ヤンの訃報が報道された。カンヌで、北野武監督と同時受賞したことで、多少日本での知名度は上がったものの、ヤン監督の作品を知る人はとても少ない。だが、「?嶺街少年殺人事件」を一度でも観れば、台湾が抱える抑圧された人々の生活、歴史的な背景の複雑さ、移民、暴力、政治的な抑圧、外からの文化による混乱等を知ることが出来るだろう。アメリカで学び、アメリカで死んだ一人の台湾人監督の仕事を通して、その生き方を探る。
『エリック・ホッファー自伝』−構想された真実−
エリック・ホッファー 作品社
失明、視力回復、貧困、自殺未遂の果て、ホッファーは季節労働者として米国西海岸を10年間放浪した。一度も公教育を受けたことがなく、生活費を稼いでは図書館に通い、読書によって深い思索を得た彼はやがて、「沖仲士の哲学者」として尊敬され、米国思想界に大きな影響を与えた。巨大国家の最底辺から生まれた静謐な思想は、社会・歴史への深い洞察に満ち、心を打つ。
『横山大観』
横山大観 日本図書センター
横山大観は朦朧派と呼ばれ、当初は受け入れられずに批判されたが、海外での評価もあり徐々に受け入れられていく。大観は自身の性格を「激しい燃えるような情熱の男」と表した。師・岡倉点心への思いや、若くして亡くなった親友・菱田春草との思い出など、近代日本を代表する美術家として活躍した大観の自伝。
『シャネルの真実』
山口昌子 新潮社
シャネルの自伝はいくつかあるが、そのどれもシャネルの出生の真実を語っていなかった。幼くして母を亡くし、父に孤児院へと預けられた過去は、シャネルにとって表に出せない秘密であったようだ。女性の地位が低かった時代のフランス、シャネルがどのようにして自分の立場を確立していったのか、真実が語られている。
『森岡ママはきょうも笑顔で丘の上』
森岡まさ子 講談社
本書のサブタイトルは「97歳の青春を生きる」。原爆症の夫とともに、山あいの町でユースホステルを始め、多くの若者が訪れた。子がいないので、彼らをわが子だと思ってもてなし、彼らも自分たちを父母のように慕ってくれた。心を軽くする薬「こそ丸」など人間関係に役立つ話が満載。人との出会いが人生の宝だと著者は言う。
『星野道夫物語』
国松俊英 ポプラ社
写真家星野道夫は、アラスカの自然や野生動物を撮り続け1996年8月、ヒグマに襲われ、亡くなった。その写真からは、太古から自然と生物が営んできたはるかな時間と地球の生命の輝きを感じることができる。この本は、読者に星野道夫の少年時代と青年時代の人生を通して、21世紀の人間と自然そして生命について考えさせてくれる。