紹介文
『岡本太朗が、いる』
岡本敏子 新潮社
1970年大坂万国博覧会が開かれた。テーマは「人類の進歩と調和」この近代主義に真っ向から「NO]を突きつけ<太陽の塔>を作成し挑戦した岡本太郎。彼の芸術は多岐にわたり、常に過激でエネルギッシュに満ち溢れ、没してもなお多くの人を魅了し続けている。その彼を、有能な秘書として、後には養女となって、公私ともに支え続けた岡本敏子。50年もの長きに渡り常に寄り添った彼女だからこそ知り得た、我々の知らない繊細で情愛が濃く深い岡本太郎の一面を窺い知ることができる。
『木村伊兵衛の眼』〜スナップショットはこう撮れ
平凡社
まだ写真というものが特別だった時代、惜しみなくライカのシャッターを切り、日常という一瞬のリアリティを追求した写真家木村伊兵衛。きれいに写らなくても、そこに物語を感じさせる写真の数々は、今の写真家たちの多くが追い求めるテーマとなっている。荒木経惟や川本三郎が語る写真家・木村伊兵衛の世界を、作品とともに味わうことが出来る。
『帝国ホテル厨房物語』
村上信夫 日本経済新聞社
帝国ホテルで厨房の総責任者を26年も勤めたコックの自伝。ヨーロッパ各地で修行し、留学中に学んだ北欧料理をバイキングとして紹介、NHK「きょうの料理」に出演するなど戦後の日本の食卓へフランス料理を普及させた。東京オリンピックでは選手村食堂の料理長として活躍。各国の食事情や選手たちとの思い出が興味深い。
『ジョゼフ・フーシェ』
長塚隆二 読売新聞社
フーシェは、フランス革命の折り、国王の死刑に賛成票を投じながら、その後の王政復古の流れにもうまくのって警察大臣となり、ナポレオン皇帝にも重用された。シュテファン・ツヴァイクの伝記には、彼は計算高く、冷徹な変節漢とされているが、本著では、そうとばかりも言えない彼の違った一面、彼なりの論理が見えてくる。
『ジョージ・ハリスン自伝』
ジョージ・ハリスン 河出書房新社
ジョージ・ハリスンが36歳の時にまとめた唯一の自伝である。生い立ちや人生哲学などを語った第一部とジョージ自身による曲解説や作詞原稿が見られる第二部から成る。中学生の時、好きだと思う曲はなぜかジョージの曲が多かった。大人に成った今、本書を読み、曲に込められた彼の哲学を知った。
『極上歌丸ばなし』
桂歌丸 うなぎ書房
現在、最も活躍する噺家の1人となるまでの軌跡を、桂歌丸自身が振り返る。真金町の女郎屋を営む祖母に育てられ、中学3年生で古今亭今輔に弟子入り。古典・新作織り交ぜて教え込まれ、順調に行くかに見えた矢先の師匠との仲違い。持ち前の話芸で軽快に語っているが、決して平坦な道ではなかったことが伺え、1人の噺家の、芸の道への真剣なまなざしを感じることができる。
『カール・ロジャース 静かなる革命』
カール・R.ロジャーズ デイビッド・E.ラッセル 誠信書房
心理学者カール・ロジャースは来談者(クライエント)中心療法を提唱した。カウンセラーはクライエントの悩みに共感し理解するだけで、けしてアドバイスも判断もしない。この考え方は現在のカウンセリングの基礎となっている。ロジャースの生涯や来談者中心療法について、さらに未来へのロジャースの考え方がわかる一冊。
『定本本田宗一郎伝』
中部博 三樹書房
本田宗一郎の誕生からその死まで、関係者からのインタビューや記録などにより忠実にまとめ、本田宗一郎の生き様がリアルに感じられる一冊。そしてこの本は、自動車メーカーとしてのホンダの成長の記録でもある。ホンダファンだけでなく、すべてのバイク、車好きに薦めたい。