紹介文
『二列目の人生 隠れた異才たち』
池内 紀 集英社
橋爪四郎、島成園、篁牛人の名を知らなくても、古橋広之進、上村松園、棟方志功の名はご存知の方が多いだろう。橋爪は「フジヤマのトビウオ」古橋と競い、常に2番手だった競泳選手。島は上村を含む美人画三園のひとり。篁は棟方と同時代、優れた芸術性で他を圧倒しながら、名声では棟方に及ばなかった画家。人々の記憶に残る者と残らなかった者の分岐点は何か。歴史の狭間の天才に光をあてた伝記エッセイ。
『気品磨き』
長谷川智恵子 講談社
大学を中退し、画商に嫁いだ著者は、義父母と同居。姑は89歳まで仕事を続け、家事万能、おしゃれで、強い性格だった。姑から教わったのは、時間があれば働くこと。姑を超えたいと自分を鍛えた。大変だと言う前に、その裏側にある学べることを考えてはどうか、楽なことを選べば成長はなかったと姑に感謝しているという。人生のヒントがちりばめられた本である。
『ジャコ・パストリアスの肖像』
ビル・ミルコウスキー リットーミュージック
エレクトリックベースの奏法に革命をもたらし、天才ともいわれたパストリアス。若くして不慮の事故によりこの世を去ってしまったが、彼の生い立ちから音楽的背景までを関係者などからのインタビューにより掘り下げており、ジャコ・パストリアスを知るには最適。天才と呼ばれる人はこういうものなのかと考えさせられる。書名は彼のファーストソロアルバムと同じである。
『やれば、できる。』
小柴昌俊 新潮社
平成14年にノーベル物理学賞を受賞した小柴教授の自伝。負けず嫌いで猛勉強の末に東大物理学科に進むが成績はビリ。しかしその後アメリカ留学、帰国後はカミオカンデの建設に奔走し、ついにニュートリノの観測に成功する。まさに“やればできる”のタイトルがぴったり。大学卒業時の成績表や東大卒業式での祝辞は必見。
『生きている事を楽しんで』
ターシャ・テューダー メディアファクトリー
2008年6月に92歳で亡くなった著者は、絵本作家、挿絵画家としての人気はもちろん、その生き方にも多くの共感を得ている。アメリカ、バーモントの山奥でほぼ自給自足の生活を営みながら、広大な庭で草花を育て、絵を描いた、彼女のつぶやきを集めた1冊。 2006年に撮影された写真と、彼女自身の挿絵が添えられている。
『高峰秀子の捨てられない荷物』
斉藤明美 文藝春秋
天才子役でデビューしてから、常にトップスターとして走り続けてきた「女優高峰秀子」。その軌跡の自伝「わたしの渡世日記」以降を、個人的に親しい著者が評伝として書いたもの。夫松山善三と二人三脚で歩んできたエピソードなど、人間としての素顔を知ることができるとともに、本物を見極める力、見事な生きっぷりはわれわれに人生について考えるヒントをくれる。
『徳川慶喜家の子ども部屋』
榊原喜佐子 草思社
著者は江戸幕府最後の将軍徳川慶喜の孫にして、高松宮妃の妹にあたる。本書では、東京小石川の第六天で過ごした少女時代が、四季折々の行事や姉の婚礼などのエピソードを織り交ぜて語られる。ほんの数十年前にこのような優雅な生活が営まれていたことにとても驚かされると共に、昭和のはじめの華族の暮らしぶりが伺い知れ、興味深い。