経済不況
『悪夢のサイクル−ネオリベラリズム循環』
内橋克人/著 文藝春秋 2009
一般に、「規制緩和」を進め、「構造改革」を断行することが日本経済にプラスになるとされてきた。しかし現実には経済は低迷し、非正規雇用が増大し、ごく普通の生活を送ることさえ極めて困難になっている。なぜ、こんなことになってしまったのか。70年代半ばに規制緩和を推進したチリとアルゼンチンにおける経済発展プロセスと今の日本の現状を比較しながら解説する。
『オバマのアメリカ−次なる世界経済の行方』
藤井英彦/著 東洋経済新報社 2009
日本経済を考える上で、アメリカ経済は欠くことのできない極めて重要な存在である。世界的金融危機の発端はアメリカのリーマン・ブラザーズの経営破綻がきっかけであり、日本だけではなく世界中に大きな影響を与えている。著者は(株)日本総合研究所調査部長・チーフエコノミストでマクロ経済、経済政策一般を専門分野としている。本書では、アメリカ経済を見直し、今後日本がどのように進むべきか提言している。
『闘う経済学−未来をつくる「公共政策論」入門』
竹中平蔵/著 集英社インターナショナル 2008
2001年から小泉内閣の下で約6年、経済政策に携わってきた著者。7年ぶりに教壇に復帰した現在も、経済学と複雑な現実経済=政策との間に埋めなければならない隙間を感じ続けている。増税・金融危機・失業・役人・既得権・抵抗勢力・千変万化の政治・権力、それらと闘った経験から、本書では経済学にとどまらず幅広い視野を養う必要性を説いている。また随所に、内閣の様子が非常に具体的に語られていて大変興味深い。
『人間回復の経済学』
神野直彦/著 岩波書店 2002
本書は、人間性と地域社会の両面から、その回復と再生を論じたものである。現在の「経済に支配された人間」から「人間のための経済」に転換を図り、教育や人材育成、対人サービスなど今後訪れる「知識社会」にとって重要な、人間の知的能力の向上に価値を置く社会経済システムの構築を目指している。そして「人間のための経済」活動を通じて、「人間の生活の場を創造する」地域再生を提言するものとなっている。
『日本経済の構造変動−日本型システムはどこに行くのか』
小峰隆夫/編 岩波書店 2006
経済社会構造の変化は、持続的な経済成長のためにいつの時代でも必要なことである。現在は「ドミノ倒し的」に構造変動が進みつつあり、旧来の「日本型社会経済システム」から、時代の流れにあった新しい経済社会システムを構築することが必要であるという立場からの提言である。雇用、企業経営、産業構造、金融、公的部門、地域開発、少子・高齢化の各問題について、3つの基本的視点「経済は国民の福祉・生活水準の向上のためにある」、「市場メカニズムの働きを生かすことを重視」、「現世代が将来世代に負担を残したり拘束したりしない“世代の自立”という理念」に立って構造変動の行方を考察する。