社会保障
『希望の構想−分権・社会保障・財政改革のトータルプラン』
神野直彦/編 岩波書店 2006
著者は、これまで行われてきた「構造改革」が「ヴィジョンなき破壊」であると批判し、「トータルとしての財政改革論」を本書によって提示する。「財政破綻」「財政再建」論に対して、債務返済を棚上げにする「資産・負債管理型国家」を提唱し、「小さな政府」論に対しては、地方政府、社会保障基金政府、中央政府という「三つの政府」に再編し、「ほどよい」大きさの政府とすることを提唱する。このような改革を通して、人々が競争を余儀なくされる社会から、安心と信頼に支えられた協力の社会への変革を構想する。
『だまされないための年金・医療・介護入門−社会保障改革の正しい見方・考え方』
鈴木亘/著 東洋経済新報社 2009
昨今、国民に大きな不信感を与えている政府・政治家・省庁。様々な社会保障の見直しは、国民生活を救うどころか悪化させ続けている。本書は、社会保障制度の問題点や改革のあり方を、数多くの図表を示して非常にわかり易く説明している。 “少子高齢化”が否応無く進行する中、著者は「積立方式への移行」が悲惨な未来を避ける唯一の道であると述べている。政治家や官僚に「だまされた」と済ませるだけではなく、今こそ国民一人一人が社会保障問題への理解を深める必要があると訴える。
『2015年の社会保障制度入門−社会的連帯の強化と自己決定の尊重』
野村総合研究所/著 野村総合研究所 2008
本書は、野村総合研究所の著作となっているが、内容は研究理事である中村実氏による社会保障制度改革と制度を支える社会を構築するための提言集である。2015年になると団塊の世代は年金受給が始まっており、社会保障費の急増が見込まれる。そのため、2015年までに社会保障制度改革に関する基本原則に筋道をつけ、彼らが75歳になる2025年には、全ての改革を終えていなくてはならないとしている。
『年金制度は誰のものか』
西沢和彦/著 日本経済新聞出版社 2008
年金は私たちの身近な問題であり、各政党においてマニフェストに掲げられる選挙の大きな争点であるにも関わらず、専門家でなければ理解が容易でない複雑な制度となってしまっている。著者は、本書によって国民が制度を選択できる知識を持つことができるようになることを目指して、本書を執筆したという。日本の年金制度の歴史や将来における問題点、日本が参考とすべき諸外国の紹介等から構成されており、参考となる一冊である。
『福祉ってなんだ』
古川孝順/著 岩波ジュニア新書 2008
高齢化や社会格差の問題が深刻化する現代社会において、福祉に対する関心・ニーズはますます高まっている。いま必要とされている「福祉」とはどのようなものか?本書は、現在の社会福祉の施策や制度の実態というよりは、社会福祉の全体像をその意義や成り立ち、仕組み等の角度から紹介する。社会福祉を学ぶ若い世代に必読の入門書である。