障がいをのり越えて
サトクリフは、2歳の時にスティル氏病に冒され、歩行能力を失います。そのため、学校生活はわずかな期間しか送れず、ほとんどの時間を母親のもとで過ごしたのです。彼女の物語には、精神的、肉体的に苦難を背負った主人公が、運命に抗い、困難に立ち向かってゆく様子が描かれます。その苦しみや内的葛藤は、彼女自身が体験してきたものと重なっているのかもしれません。
『思い出の青い丘 −サトクリフ自伝−』
猪熊葉子/訳 岩波書店 1985年
サトクリフが63歳の時に出版した自伝。もともとは、自身の一族の歴史を書きとめるつもりで、若い世代に向けて書いたという。
障がいを負って生きていくことの苦しみや葛藤を書きながらも、友人や恋人と人間関係を築き、自分の価値を見出し、物語作家へ成長していく様子は、生きる喜びに満ち溢れている。
サトクリフの原点に触れることができる、珠玉の一冊。
『太陽の戦士』
猪熊葉子/訳 岩波書店 1968年
紀元前約900年、青銅器時代のイギリス。武勇が尊ばれ、独力でオオカミを仕留めることが、一人前の男の条件だった。大きくなれば戦士になれると疑っていなかったドレムは、不自由な片手をあざける祖父の言葉に傷つく。与えられたチャンスにドレムは挑むが…。自分の居場所を手に入れるため闘ったサトクリフにとって、もう一つの自叙伝といえる作品。