頭で考える
『ジャガイモの花と実』
板倉聖宣/著 仮説社 2009年
ジャガイモは種芋を使って栽培する。それなら、なぜ花は咲くのか? この小さな疑問を出発点に、植物の性質、品種改良や伝播・普及の歴史、それに関わる人々などを紹介し、自然の仕組みの面白さと人間の知恵の素晴らしさを描き出す。新版に掲載されたジャガイモの実や種の写真、種から育てた実物を描いた挿絵も興味深く、科学教育への真摯な姿勢を感じさせる。初版の発行から40年以上が経つ今も、読者に新鮮な驚きを与え続けている。
『ぼくらはガリレオ』
板倉聖宣/著 岩波書店 1972年
地動説で有名なガリレオの名前は誰でも知っている。同時に、ガリレオは、振り子の法則も発見している。だが、振り子の法則はなぜ重要なのだろうか。歴史上の天才の発見は、私たちには関係ないと思っていないだろうか。
ガリレオの考えたことをたどって、予想をたて、実験してみる。この本で体験できるのはその道筋である。昔の人はどう考えていて、ガリレオは何を不思議だと思ったのか。そして何を発見したのか。この本を読めば、天才でなくても、ちゃんと理解できる。
『素数ゼミの謎』
吉村仁/著 文藝春秋 2005年
もしも10年以上何もいなかったところに、突然数十万匹のセミが現れたら? アメリカには、羽化するまでに13年または17年もの時間を費やし、局地的に大量発生するセミがいる。著者は、厳しく長い氷河時代と、素数の不思議な力が、このセミの進化に大きな影響を与えたという。14、15、16年よりも、素数である13、17年の周期は絶滅の危険性が低いことを、イラストと数学(最小公倍数)を使ってわかりやすく説明していく。
『お父さんが話してくれた宇宙の歴史』
池内了/文 岩波書店 1992年
ビッグバンや、超新星などの言葉はなんとなく聞いたことがある。図鑑を開けば、細かい解説がいっぱいだ。でも、断片のような知識をいくら知っていても、それだけで宇宙を知ったことにはならない。この本のお父さんは宇宙の専門家。子どもたちを天文台まで星を観に連れて行ってくれる。宇宙にも始まりがあること、そして成長し、広がっていく「ものがたり」があることを語ってくれる。それは、同時に、宇宙理論の展開の筋道をたどる「ものがたり」である。第13回吉村証子記念「日本科学読物賞」受賞作。