浦安市立図書館

大正デモクラシー

 
画像:『恋と伯爵と大正デモクラシー』

『恋と伯爵と大正デモクラシー』

山本一生/著 日本経済新聞出版社 2007年

本書の序章は、図書館で調べ物をする場面から始まる。著者は、図書館資料から有馬頼寧日記にたびたび出てくる人物「八重ちゃん」が誰かを突き止め、それを契機に彼の恋愛や大正という時代を読み解いていく。有馬頼寧は、競馬の有馬記念競走の創設者であり、政治家である。華族でありながら、農民運動や労働運動を支援して昭和の革新運動にもかかわるなど異彩を放った半生が、日記の記述や登場人物をもとに丁寧に解説されている。屋敷の使用人であった女性との恋の行方、「私は恐らく死ぬまで恋をするだろう」などの恋愛感情の率直な描写はまるで小説のようにドラマティックである。

画像:『断髪のモダンガール 42人の大正怪女伝』

『断髪のモダンガール 42人の大正怪女伝』

森まゆみ/著 文藝春秋 2008年

まだ断髪が「女をやめる」ことを意味する時代に、こんなに力強く自らの人生と戦って生き抜いた女たちがいたということにまず驚かされる。本書は、洋行、恋愛至上主義、仕事等、目も眩むほど濃密な42人の人生が濃縮された一冊だ。各人のページは単独でも勿論大変面白いが、全体を通して読むことによって、文化人たちの交流関係が見えてきて興味深い。時代柄、『青鞜』に関わりの深い人物も多く紹介されている。もう一つ驚くべきことは、大正時代の彼女たちが、恋愛や結婚において平成の女性たちと同じ悩みを抱えていたこと。疲れ気味でやる気が起きない、そんな現代女性に特にお勧めしたい。エネルギッシュな彼女たちの生き様に勇気がもらえるはずだ。

画像:『マンガ誕生 大正デモクラシーからの出発』

『マンガ誕生 大正デモクラシーからの出発』

清水勲/著 吉川弘文館 1999年

漫画・風刺画史研究家で、日本漫画資料館館長でもある著者は、現在、「マンガ」と呼ばれる表現方法が、時代とともに「ポンチ」、「鳥羽絵」、「漫画(マンガ)」、「コミック」、「アニメ」と呼び方が変わり、その形態も一枚絵から、コマ漫画、ストーリー漫画へと大きく進歩していった、その土台が作られたのが、大正デモクラシーの時代だったと述べている。世界に誇れるニッポンのアニメは、どのような時代を経てきたのだろうか。時代を切り取る、雑誌の表紙や新聞の挿し絵が多く掲載されていて、当時の人々の生活を垣間見ることができて、とても興味深い。

画像:『大帝没後 大正という時代を考える』

『大帝没後 大正という時代を考える』

長山靖生/著 新潮社 2007年

本書では大正と平成の世の若者に着目し、「大正の青年と平成の若者は驚くほど似ている」と指摘する。繁栄の中で成長した世代は、大正青年にしても、平成の若者にしても、その親の世代からすると、親の遺産を食いつぶす頼りない存在に見える点が共通しているのだそうだ。近代社会のシステムが完成し、それなりに豊かな社会を達成したあとの人間の行動パターンは似ており、それが両時代の若者の姿に顕著にあらわれたのだという。大正と平成の時代の類似点をこう指摘するほか、圧倒的なカリスマ性で君臨した明治天皇が没した後の、短くも高い精神文化を生んだとされる大正時代の世相をさまざまな角度から読み解いていく。

画像:『日記に読む近代日本3 大正』

『日記に読む近代日本3 大正』

山口輝臣/編 吉川弘文館 2012年

編者によると「大正時代は日記の時代である」という。大正という時代には、政治、社会、文化の各方面におけるさまざまな中心人物が日記を書いている。平民宰相といわれる原敬、民本主義を唱え民主化への理論的実践を行った政治学者、吉野作造。この政治界のツートップが日記を残したことで、当時の日本を窺い知ることができる。このほか、画家の岸田劉生、「革新華族」と呼ばれる有馬頼寧、のちにプロレタリア文学作家として著名になる宮本百合子、評論家の大宅壮一ら十人十色の日記に、新しい時代の息吹を感じ取ることができる。

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