気持ちを理解する(自分らしく生きる) 児童文学のなかの障がい者 フィクションの本
「わたしのすてきなたびする目」
ジェニー・スー・コステキ=ショー/さく 美馬しょうこ/やく 不二門尚/監修 偕成社 2013年
ジェニー・スーは、自由にいろいろなものを見に行ってしまう「たびする目」を持つ女の子。それは、斜視と呼ばれる小児眼科の病気でした。ジェニー・スーは良いほうの目をパッチで隠す治療を始めますが、見えにくいしパッチが変だとからかわれます。でも、おかあさんといっしょにすてきな手作りパッチを工夫したら、みんながまねしたがるようになりました。人と違うことを明るく受け止める主人公の姿が魅力です。
「もちろん返事をまってます」
ガリラ・ロンフェデル・アミット/作 母袋夏生/訳 安藤由紀/絵 岩崎書店 1999年
ドゥディは豊かな感性と知性の持ち主ですが、障害のため話すことさえ難しく、車いすで暮らしてます。小学校5年ノアは、最初はボランティアのつもりで彼と文通を始めましが、すぐに話が合ういい友人になれると感じ始めます。でも、実際にノアが会いたいと伝えると、ドゥディは自分の姿を見たら嫌われるのでは不安にかられ拒絶してしまいます。手紙を通して二人が互いを理解していく姿が魅力です。
「ヒルベルという子がいた」
ペーター・ヘルトリング/作 上田真而/子訳 偕成社 2005年
「ヒルベルって、ほんとうに悪い子だよ」とみんなは言いました。生まれた時の頭の傷のせいで、絶えず頭痛に苦しめられてあばれる彼は、文字や計算も覚えられません。母親は施設に預けっぱなし、里親も彼の乱暴に手を焼いてすぐ見放しました。けれども彼は、危険な人を避け、彼を見下す人の中を生き抜くために、常に闘うことをやめませんでした。ありのままの自分を受け入れてくれる誰かを求めた一人の男の子の物語。
「夜中に犬に起こった奇妙な事件」
マーク・ハッドン/著 小尾芙佐/訳 早川書房 2003年
ある晩、近所の犬が殺されました。人とうまく付き合えない15歳の少年クリストファーですが、自ら探偵となって犯人を見つけようと思います。特別支援クラスの先生の協力を得て、その過程を1冊の推理小説にまとめようと考えたのです。彼は、得意な数学や優れた記憶力を使って事件の犯人を追いかけます。自閉症の主人公の視点で語られる物語は、その独自の世界の見方が新鮮に映ります。
「ワンダー」
R・J・パラシオ/作 中井はるの/訳 ほるぷ出版 2015年
生まれつき顔に障がいがあるオーガスト。顎を成型し、目の位置を直すなど手術を重ねても、誰もがぎょっとするような顔です。両親も姉も心から彼を愛していますが、10歳になって学校に通い始めた時、まわりの視線はあまりにも冷たいものでした。最初は先生に言われたからでしたが、気付いたら仲良くなっていたジャック。食堂で隣に来てくれたサマー。姉、友人、オーガスト自身など様々な視点で、偏見が変わっていく過程が描かれます。
「おとうさんといっしょに」
白石清春/さく いまきみち・西村繁男/え 福音館書店 1987
あきくんのお父さんは脳性小児まひという障がいがあり、体を思うように動かすことができません。ある日、お母さんの代わりにあきくんを保育園に送ってくれますが、電動車いすでの移動は大変です。最初はお母さんがいいと、べそをかいていたあきくんですが、やさしいお父さんと一緒のいつもとちょっと違う登園が楽しくなってきます。障がいのあるお父さんと子どもの間の温かい心の交流が描かれます。続編あり。