生理学・医学賞
カロリンスカ研究所が選考を担当。研究所という名前がついているが、ヨーロッパを代表する名門医科大学である。1810年創設、1817年より現表記。ノーベル委員会5名のほか、医学部教授50名からなる「ノーベル会議」から、専門領域に特に適性を持った委員10名が選考過程に関与している。
2017年までに日本出身の受賞者は4名。
利根川進
「抗体の多様性を生じさせる遺伝子的原理の発見」により1987年受賞
精神と物質
立花隆・利根川進/著 文藝春秋 1990
利根川進と立花隆の20時間以上に渡る対談をまとめたもので、ノーベル賞受賞後の1988年から1990年にかけて『文藝春秋』誌上に連載された。利根川氏が研究してきた分子生物学や遺伝子学についての内容は専門的で難しいが、立花氏による背景の説明や欄外の語註があり理解を助けてくれる。合間に語られる利根川氏の留学生活やアメリカの大学と学者たちの話、化学科出身の氏が分子生物学の世界に入るまでの遍歴等はとても興味深い。
山中伸弥
「成熟した細胞をリプログラミングすることで多様性を持たせることができることの発見」により2012年受賞
山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた
山中伸弥/著 講談社 2012
皮膚細胞から体のどんな組織にもなり得る「iPS細胞」を発見するまでの道のりを、一般の読者にもわかりやすいよう平易な言葉で綴っている。整形外科医になるものの不治の病に苦しむ患者を前に無力さを感じるようになった彼は、臨床医から研究者へ転身した。長期的目標を持つことと一生懸命働くことが大切だという山中氏。難病を治したいという情熱を糧に研究を続けた彼の素顔に触れることができる。
大村智
「線虫の寄生によって引き起こされる感染症に対する新たな治療法に関する発見」により2015年受賞
自然が答えを持っている
大村智/著 潮出版社 2016
山梨県の緑豊かな地に生まれ育ち、自然の観察や山の絵を描くのが好きだったという大村氏。全国各地で採集した土の中の微生物から数々の新化合物を発見、アフリカ地域の何億という人々を感染症の危険から救った。 自身の特許料で設立した北里大学メディカルセンター病院は「美術館病院」とも言われ、病院を訪れる多くの人の心を癒しているそうだ。著者の人を想う優しい人柄が伝わるエッセイ集。巻頭にノーベル生理学医学賞の受賞講演録を掲載している。
大隅良典
「オートファジーの仕組みの解明」により2016年受賞