日本人の「住」
椅子と日本人のからだ
矢田部英正/著 筑摩書房 2011年
書を綴る、茶を立てる、庭を眺める…床坐文化であるがゆえに、諸外国と比べて「椅子」が発達してこなかった日本。直立が基本姿勢であるヨーロッパ人との比較、禅の姿勢理論、和装の帯の姿勢補助効果と椅子の背もたれの関係など、身体技法の研究家である著者が、生活習慣や信仰の違いが衣食住の中の動作にどんな影響を与えてきたかについて考察する。
絵引 民具の事典
工藤員功/編 河出書房新社 2017年
名前のわからない民具を、目次の絵から探すことができる事典。「箱眼鏡」「長持」「炭火アイロン」など、現代ではなかなか目にすることがない昔の日常生活で使用されていた道具が、精密なイラストとともに解説されている。ビニールやプラスチックが無い時代に、手作りで作られた道具には温かみが感じられる。どのページからでも、読み物として楽しめる。
新版 茅葺きの民俗学
安藤邦廣/著 はる書房 2017年
岐阜県白川郷や富山県五箇山などの集落で見ることができる、茅葺き屋根。断熱性と通気性に優れているが、村人総出で一軒の屋根を葺き替える必要があり多大な労力を要する。本書は、茅葺き屋根の材料とその収集・運搬方法、地域による構造の違いなどを詳細に解説する。茅葺きの集落を維持することが農村という共同体の営みそのものでもあったことがよくわかる希少な資料である。
トイレ ―排泄の空間から見る日本の文化と歴史
屎尿・下水研究会/編著 ミネルヴァ書房 2016年
現代人にとってホッと一息つける場とも言えるトイレ。しかし、江戸時代には、小便を食べ物やお金と交換する小便買いと呼ばれる職業があったり、女性が桶に立ち小便をしていたりなど、今では考えられないこともたくさんあった。トイレを意味する「厠」も、かつて川の上に屋根をかけそこで排泄物を流していた「川屋」が語源だとか。時代ごとのトイレに関する豆知識を通して日本の文化と歴史を紹介する。
日本人の住まい
宮本常一/著 田村善次郎/編集 農山漁村文化協会 2007年
屋根、戸や床など、日本古来の民家構造の変遷を解説する第1部と、地域や生業または信仰による家の大きさ・土間の広さなどの違いを、特徴的な間取りで例示する第2部で構成。民俗学者である宮本常一がフィールドワークで収集した全国各地の事例が紹介されている。建築家目線ではなく、民家を「庶民の生きる場」という視点で書き綴っている。
図説 江戸の暮らし事典
企画集団エド/編著 芙蓉書房出版 2018年
江戸時代に使われていた道具の図版が、衣食住、遊び、旅などシーンごとに1,000点も掲載されており、「道具」という切り口から当時の暮らしを浮かび上がらせてくれる本。日本全国の博物館や資料館に実際に収蔵されているものが写真で紹介されている。職人の時代とも言われる江戸時代に作られた道具は実用性と意匠に優れており、見事としか言いようがない。