日本庭園史に欠かせない昭和期の作庭家・重森三玲。敷石と苔と砂で市松模様を表した東福寺本坊庭園など、誰もがモダンな美しさに目を見張る庭を多く遺しました。本書は、複数の著書からエッセイをまとめたものです。作庭以上に楽しいことはないとする、庭を作ることに対する深い思いとともに、庭を見るには芸術作品として見ること、真摯な態度で見ることが重要であるという、鑑賞するための心構えを知ることができます。
北海道札幌市のモエレ沼公園。イサム・ノグチの最後のプロジェクトであり、大地そのものを彫刻として地球を掘り込むというアイディア「プレイマウンテン」を実現させた夢の公園です。プロジェクト受託後、まもなく迎えたイサムの死を乗り越え、引き継いだ設計チームは、残されたマスタープランをもとに、公園の完成へと動き続けます。イサムと親しかった設計統括の建築家等が詳細に著した17年に渡る記録です。
著者は、京都で代々御室御所に仕える造園業「植藤」の十六代目。祖父の代から全国を駆け巡って桜の保護をしている「桜守」としても有名です。庭は各地の風土の一部であり、作った庭は、単なる手入れではなく、どう育っていくかなどを理解した「守り」が必要であるといいます。次の世代が庭を楽しむために、木を植え長い時間をかけて育てる仕事は、すぐに成果を求められる現代において、本当に大切なものが何かを教えてくれます。
ロンドンに移住し、知識ゼロからガーデニングを始めた著者。大事なのは植物の個性に合った土と日照条件であることを学び、基本の土づくりに精を出します。堆肥づくりのために真剣に馬糞を求める姿や、蕾を食べてしまうナメクジ、花や球根を食べつくすリスとの戦いを経て、一枚の絵になるよう庭をデザインしてゆく楽しさを知っていきます。4年間の奮闘の記録をさらに彩る写真や、園芸用品、ファッションのイラストも魅力的です。
園芸家がどんな1年を過ごしているか、想像がつきますか? 思い通りにならない自然を相手に、1月は固い土を何とか耕そうとし、2月はミミズのように土壌への熱意がわきと、まったく忙しい日々を送っているのです。園芸家でチェコを代表する作家、カレル・チャペックが愛と絶妙なユーモアを込めて、同じく園芸好きの兄ヨゼフの挿絵とともにお送りする、マニアの喜びと苦悩の12か月をぜひお楽しみください。
印象派を代表する画家として名高いクロード・モネですが、彼には庭づくりを愛する一面もありました。フランスのジヴェルニーの家と庭を買い取ったモネは、洗練された画家の目で、キャンバスに描くのと同じように花を植え、変わりゆく庭の景色からインスピレーションを得ました。本書は、彼の庭の色とりどりの風景を、解説とともに紹介した一冊です。色遣いだけでなく、庭園に対する造詣の深さも感じることができるでしょう。
人間の予想を超え、絶えず変化し続ける自然。その変遷により、人の手によって整えられた庭の秩序が崩される「ずれ」に着目し、実験と観察を重ねてきた庭師ジル・クレマンの庭園論。クレマンは、生命の営みに抗わず、あわせ、導いていくことで進化を促す「動いている庭」のプロジェクトを通じて、植生と庭の調和、自然と人間の関係性を思索していきます。そして、我々が生きる、地球というひとつの庭との向き合い方を示唆してくれます。