文字の誕生からはじまり、電子書籍に至るまでの本の長い歴史について、本が語る本の半生である。著名人の本にまつわる文章を引用したり、電子書籍へのライバル心を見せたりしながら、ユーモアを交え、親愛を込めて軽快に語っている。楽しいイラストも魅力。長い冒険を経た「本」に我々が出会い、読むことができる、その幸せを改めて感じさせてくれる一冊。
本はなぜ生まれたのか。どのように形を変えていったのか。本の過去を学び、本の現在をとらえなおすことで「本のきほん」を知り、さらに未来の「本」の楽しみ方への旅に誘ってくれる。著者はディレクターとして美術や旅番組の映像制作に関わり、現在は東京・荻窪のブックカフェの店主。巻末の “「本」の全てを知るためのブックガイド” は参考文献を兼ねた充実したブックリストとなっている。
「出版界のミケランジェロ」ことアルド・ヌマーツィオは、祈祷や学習の対象だった本を娯楽に変容させた人物である。ページに順序を示す番号をつけ、文に句読点をつけ、持ち歩けるサイズの小型本を作り上げた。彼をはじめ、16世紀のヴェネツィアでは多くの印刷者や出版人が活躍した。史上初のコーランやタルムード(ユダヤ教聖典)、楽譜、料理本、文庫本など、様々な本が生まれた街の歴史を、ヴェネツィア出身の著者が語る。
出版業界を熱狂させる「ベストセラー」の謎に迫る。出版社の誇大広告によって嘘から出たまことのようにベストセラーとなった『アンクル・トムの小屋』、『ドクトル・ジバゴ』の国外での大ヒットにより祖国で非難を浴び孤立したパステルナークなど、輝かしいばかりではない裏側を紐解いていく。今、書店を賑わすベストセラーは何故「売れている」のか? 一度考えてみるのも面白いだろう。
古くは紀元前3000年に描かれた古代エジプトの『死者の書』から、グーテンベルクが活版印刷技術を使用した西洋で初の印刷聖書、更にはアインシュタインの『一般相対性理論』など、世界の歴史に残る様々な文書、書籍が数多くカラー写真で紹介されている。「本」というものがどのように発展してきたかが分かると同時に、美しい装丁や当時のデザインなどを楽しむことができる。
1章の見出しから「本は死なない」と言い切る、凝った装丁が印象的な1冊。『薔薇の名前』の著者としても知られる記号学者のエーコと脚本家のカリエール、古書収集家ふたりの対話形式で書物への愛が綴られる。偏愛的だが盲目ではなく、書物の中身が作者により意図的に改変される可能性や、文化の記録を書物に託すことで焚書や災害で失われる危険性にも言及。紙の本が好きな人にも、電子に置き換わると信じる人にもおすすめの文化論だ。
本を選ぶきっかけが表紙や背表紙に惹かれたというのなら、それは装丁家の仕事によるものかもしれない。2,500冊以上もの本の装丁に携わったという著者。その仕事ぶりや本とのつきあい方を語る本書が冒頭から言及するのは、広く普及を見せ始めた電子書籍との関わりである。電子化により紙の本はなくなるのか。本の歴史が大きく変わりつつある今、装丁家の果たしてきた役割の大きさが改めて実感できる。