熊楠ゆかりの人々
『南方熊楠百話』
飯倉照平・長谷川興蔵/編 八坂書房
南方熊楠にまつわる百の話。それらは直情的で奇行ばかりが言われる熊楠の知られざる一面を伝えている。熊楠と交流のあった人々が綴る思い出、書簡、民俗学者による評論など「百話」を、生涯・仕事・評論別に掲載。そこから浮かび上がるのは、学問はもちろん万事に誠心誠意向き合い、愛情あふれる熊楠のありのままの姿である。筆者は柳田国男、孫文、土宜法竜、南方文枝(熊楠の娘)、牧野富太郎、中沢新一ほか多数。
『父南方熊楠を語る』
南方文枝/ほか著 日本エディタースクール出版部
粘菌研究のため、家族が庭の掃除をすれば叱りつけ、書斎は本や顕微鏡で埋め尽くされてあいているのは自分が座るところだけしかなく、夏は裸で過ごし、研究に熱中するとご飯を食べたかどうかも分からなくなる…。天才・南方熊楠の人間味あふれる日常生活や思い出を、その娘が肉親ならではの親しみを込めて語る。他、「『牟婁(むろ)新報寄稿』神社合祀反対・自然保護論集」「大山神社合祀反対に関する古田幸吉宛書簡」を掲載。
『およどん盛衰記 南方家の女たち』
神坂次郎著 中央公論社
「縛られた巨人」の作者が描く南方熊楠の外伝的小説。熊野田辺の南方家に奉公した7人のおよどん(女中さん)たちの姿を生き生きと、温かい目で描くとともに、熊楠の人間くさく、天真爛漫な素顔や日常を紹介している。また、医師の喜多幅武三郎、画家の川島草堂ら愛すべき仲間たちとの交流や、さまざまな珍騒動をユーモラスに描いている。巻末に熊楠の娘である南方文枝との対談「熊楠の素顔」を収録。
『柳田国男・南方熊楠往復書簡集』上・下
飯倉照平/編 平凡社
明治44年から、2人が絶縁する大正15年までの間に、柳田国男と南方熊楠が交わしたおよそ170通の書簡をまとめ、編集している。自らの学問の幅を広げつつあった南方に対し、協力の手を差し伸べながらも、ついに南方の思想を理解することができなかった柳田の苦悩が読み取れる。 柳田は、南方と絶縁しながらも、南方の学問の無限の広がりを後世に残そうとしてお互いの書簡を公表した。その後の民俗学のあり方に影響を与えた作品の一つである。