浦安市立図書館

常盤新平

1931年岩手県生れ 早稲田大学英文学科卒。
出版社勤務を経て1969年退社。
アメリカの現代文学やニュージャーナリズムの作品を翻訳して日本に紹介する翻訳家であるとともにエッセイスト、作家としても知られる。
著書に『遠いアメリカ』(第96回直木賞)、翻訳書に『夏服を着た女たち』ほか多数。

1991年図書館カルチャー「1920年代アメリカ」

『雨あがりの街』

常盤新平/著 筑摩書房

 ある夏の朝、夕ぐれの交差点、いきつけの本屋。何げない日常のひとコマや、こだわりの品、家族、友人などが愛情ゆたかに語られる。  人生の憂いを随所に織りまぜながら、「私は貧乏人のくせに贅沢が好きだ。いや、貧乏人だからこそ、贅沢が好きなのかもしれない。そして、贅沢とは、どうでもいいと思われているものを大切にすることだと思うのである。」というように、著者の思いや願いがさりげなく顔をだす。読んだ人をやさしい気持ちにさせるエッセイ集。

画像:雨あがりの街

『夏服を着た女たち』

アーウィン・ショー/著 常盤新平/著 講談社

1930年代から1950年代にかけてのアメリカの時代を、きわめて細かい筆致で描きあげた短編集。  栄光の残像を追い求めるかつての大学アメフトの名選手。彼を愛した妻は自らの道を歩み始める・・・。(「80ヤード独走」)  日曜日の朝、柔らかな日差しに包まれたニューヨーク五番街を散歩する夫婦。久しぶりに二人だけの時間を過ごそうと妻はあれこれ計画するが、街行く若い女性に気を取られる夫の様子に、妻は我慢していた言葉を口にする。(「夏服を着た女たち」) このほか、男と女のしゃれた会話・夫婦の会話が描かれている短編小説10篇が収録されている。

画像:夏服を着た女たち

『遠いアメリカ』

常盤新平/著 講談社

昭和30年代。今よりも時がゆるやかに流れ、人が寛容であったと思われる時代。 アメリカに憧れる翻訳家志望の重吉と恋人の女優の卵の椙枝。夢と現実に押しつぶされそうになりながらも、自分に正直に生きようとする不器用で慎ましい彼ら。やがて二人は結婚を決意するが、「…彼は椙枝の顔をみつめながら、何かに祈りたい気持ちになっている。これからが大変なんだ、神さま、どうか私たちをお守りください。」と思わずにはいられなかった。青春の悩みと希望を瑞々しい文章でつづった自伝的小説。昭和61年、直木賞受賞作品。

画像:遠いアメリカ

『威張ってはいかんよ』

常盤新平/著 マガジンハウス

このエッセイ集は『ダカーポ』に連載された「新・大人の流儀」が中心となって構成されている。表題作にもなった「威張ってはいかんよ」は、まさに大人の流儀のひとつ。威張るということは傍から見ていると実に醜悪で、しかも威張っている当人は気づいていないという厄介な行為で結局は損ですよ、ということをスマートに述べている。軽くこなせるほど世の中は甘くなく、かといって重く考えすぎると生きていくのが憂鬱になる。ままならぬ浮世の現実を見据えた上で他人との付き合い方から酒場での飲み方まで、日常生活のさまざまが綴られている。

画像:威張ってはいかんよ

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