宮本常一
宮本常一は、旅する民俗学者と言われ、日本中を旅して庶民の暮らしや文化などを調査・研究しました。旅で歩いた距離は約16万キロメートル、旅した日数は約4,000日、撮った写真は約10万点と言われています。写真には、宮本が見た当時の日本そのもの、庶民のありのままの姿が写っています。宮本の学問への興味は広く、民俗学、文化人類学、民具学、考古学、流通、産業など多岐にわたり、旅の記録と共に多くの考察や論文も著しました。また、宮本は、調査で地方の人々の暮らしを見て、離島振興法の成立や、地域の産業等の振興や芸能の継承にも尽力しました。
このような多くの業績を残しながら、学会では研究が体系的でない、方法論がない等の理由から、宮本の学者としての評価は高くありませんでした。しかし、10年くらい前から宮本を再評価する動きが高まり、生誕100年の2007年には新聞や雑誌が特集を組み、各地で展示会や写真展等が催されました。
民俗学は過去を振り返るための学問ではない、よりよき未来を拓くための学問であると考えていた宮本は、戦後の急成長の中で都市と地方の格差を感じたとき、地方に何が必要か、どうしたらいいのか、残すべきものはなにかを人々とともに考え、行動しました。今また、社会にさまざまな格差が生まれていますが、彼ならこれをどう考えたでしょうか。今回の展示が、宮本常一と彼の業績を知り、見直していただくきっかけとなれば幸いです。
*今回の展示および展示で作成した資料の中では、人物の名前の敬称を略し、
宮本常一は宮本、渋沢敬三は渋沢と統一して表記しております。