国土の3分の1が北極圏。針葉樹林と氷河の浸食による氷食湖の「森と湖の国」。 ヨーロッパ初の女性選挙権を認める。高度な社会保障制度、教育水準は世界トップ クラスである。 代表的な作家★サカリアス・トペリウス(1819年〜1898年)、トーベ・ヤンソン (1914年〜2001年)、イルメリン・サンドマン=リリウス(1936年〜)
『太陽の夫人 金の冠通り』 イルメリン・サンドマン=リリウス作 山口卓文訳 福武書店
19世紀末のフィンランドの小さな港町ツーラバル。「金の冠通り」に住むサンナ、シーリャ、シセラの三姉妹は、笑顔で暮らしている。だが、父は船の事故でケガを負って家に閉じこもり、母が家計を支えている。雑貨屋で働く兄ハルテルは仕事が長続きしない。ある年の冬、税関署長が殺されたことをきっかけに、事件に巻き込まれる。美しく厳しい自然を背景に、日常を幻想的に描いた作品。(189字)
『トッレ王物語VOL.1 新しい地を求めて』 イルメリン・サンドマン=リリウス作
山口卓文訳 福武書店
父王の国から、兄たちに追い出された少年トッレは、母の形見のヤギを連れ、海辺の新しい地にたどりつく。彼は、狐の血をひく少女や、森の精など様々な不思議な者たちと出会い、新しい国を築いた。だが、若き王となったトッレに、またしても兄たちのたくらみが襲いかかる。北欧神話を下敷きに書かれた、詩情あふれるファンタジー。全3部作。(156字)
『星のひとみ』 サカリアス・トペリウス作 万沢まき訳 岩波書店
ひとみに美しい輝きをやどした「星のひとみ」と呼ばれた少女は、見えないものを予言する不思議な力を持っていた。ラップ人の魔法に違いないと恐れた母親は、「星のひとみ」の少女を捨てに行くことにした。オーロラ輝く北の果てを舞台に、美しくも切ない物語を集めた短編集。
『木いちごの王さま』 サカリアス・トペリウス作 万沢まき訳 岩波書店
木いちごを摘みに行った、ティサとアイナ。迷子になった二人に次々と不思議な出来事が起こるが、二人が以前助けた小さな虫が守ってくれる。その虫の正体は、百年に一度だけ虫に姿を変えられていた木いちごの王さまだった。豊かな自然を背景としたファンタジー。
『ムーミン谷の彗星 ムーミン童話全集1』 トーベ・ヤンソン作 下村隆一訳 講談社
私たちとは、ちょっと違う風変わりな生き物たちが住むムーミン谷。近づく彗星について調べるために、ムーミンは小さなスニフと共に、天文台を目指して旅に出る。途中スナフキンやかわいいスノークのおじょうさんたちとの出会いがあり、仲間が増えていく。個性豊かな仲間に囲まれ、常に深く信頼する両親に支えられて、のびのびと暮らすムーミンの姿は、理想の子ども時代ともいえるだろう。
『彫刻家の娘』 トーベ・ヤンソン作 宮原眞弓訳 講談社
祖父母が建てた大きな家で、彫刻家の父と画家の母のもとで過ごした自伝。父が見せてくれた夜の火事、そっとのぞいた大人たちのパーティー、ボートで沖に出る冒険。いとこのカリンと悪いことを競う真剣さ、言葉の通じない外国の地質学者との交流などは、後年のムーミンの世界の原点を感じる。