昭和初期
石井桃子の仕事 編集
石井は、文藝春秋社、新潮社、岩波書店という日本でも有数の出版社で編集者としてのキャリアを積んでいる。
その出発点は文藝春秋社である。1927(昭和2)年大学在学中から菊池寛のもとでアルバイトとして働き、卒業後1930(昭和5)年12月に正式採用。『モダン日本』編集部、『婦人サロン編集部』、『話』創刊準備編集部で編集者としてのキャリアを積み1933(昭和8)年退社。
1934年山本有三の誘いで「日本少国民文庫」編集のため入社したのが新潮社である。編集部員は吉野源三郎、吉田甲子太郎、高橋健二、大木直太郎等。第1巻は『人間はどれだけのことをしてきたか』(恒藤恭/著)。平成10年国際児童図書評議会の基調講演で、美智子皇后が子ども時代に読んで心に残った本として第12巻『世界名作選』山本有三編をあげたことが契機となり、同書は復刻されて現在も読むことができる。暗い時代の中で、子どもたちに希望を与える良心な本を世に送り出したが1936(昭和11)年「日本少国民文庫」編集部解散。
戦後、子どものための出版を開始しようとした岩波書店で、吉野源三郎と小林勇(岩波茂雄の女婿)に要請され、1950年「岩波少年文庫」の編集責任者として嘱託として入社。
同第1回発売は
『宝島』スティーブンソン著 佐々木直次郎訳
『あしながおじさん』ウェブスター著 遠藤寿子訳
『クリスマス・キャロル』ディッケンズ著 村山英太郎訳
『ふたりのロッテ』ケストナー著 高橋健二訳
『ちいさい牛追い』M.ハムズン著 石井桃子訳
それまでになかった斬新で優れた海外の児童文学を次々に紹介した。
1953年「岩波の子どもの本」創刊
第1回配本
『ちびくろ・さんぼ』
ばんなーまん文 とびあす/岡部冬彦絵 光吉夏弥訳
『ふしぎなたいこ:にほんのむかしばなし』石井桃子文 清水崑絵
『ねずみとおうさま』コロマ神父文 土方重巳絵 石井桃子訳
『みんなの世界』マンロー・リーフ文絵 光吉夏弥訳
『スザンナのお人形/ビロードうさぎ』
ビアンコ文 高野三三男絵 石井桃子訳
『山のクリスマス』ベーメルマン文/え 光吉夏弥訳
現在でも子どもたちに人気がある『ちいさいおうち』バートン作は、石井の訳による第2回配本作品である。両シリーズは、現在も刊行され続けている。1954年退社。