浦安市立図書館

昭和初期

石井桃子の仕事 創作


戦後のベストセラーで映画化もされた『ノンちゃん雲に乗る』は、兵役についた友人のために書き始めた個人的な作品でした。この後も児童書を書き続けた石井ですが、87歳にして初の小説『幻の赤い実』を刊行し、まわりを驚かせます。鮮明な記憶力で、幼児期や青春時代の内面世界を伸びやかに表現した自伝的な作品群は、とりわけ大きな魅力を放っています。



画像:のんちゃんくもにのる

ノンちゃん雲に乗る

石井桃子/著 中川宗弥/絵 福音館書店 1967年

小学二年生の女の子ノンちゃんは、ある朝起きると母親と兄が自分に内緒で東京に出かけたことを知り、泣き出した。神社の木に登って泣いていると、池に落ちてしまったノンちゃん。気が付くと白い雲の上に乗っていた。そこで出会った思議なおじいさんと、大好きな家族のことについてお話を始める 時にユーモラスに、また時に鋭い指摘をすることもある主人公は、幼い日の著者の姿が素直に投影された物語といえる。

画像:おさなものがたり

幼ものがたり

石井桃子/作 吉井爽子/絵 福音館書店 1981年

70歳近くになった石井の心に、幼い日々の記憶が鮮やかに蘇える。埼玉県浦和の旧中山道沿いの金物屋で生まれ、6人兄弟の末っ子として育った石井。家族や近所の人びと、遊び、自然のことなど、物心ついてから小学校に上がるまでを描いている。 夕食後、お話が上手だったという姉が語る昔話「おししのくびはなぜあかい」を聞いたエピソードなどもあり、「石井桃子」の原点が垣間見られる作品である。



画像:風船殺人

幻の朱い実

石井桃子/著 岩波書店 1994年

美しく実ったカラスウリに囲まれた家に住む蕗(ふき)子。その朱い実にひかれるように、明子は同じ女子大出身の彼女と再会した。まだ女性が自由に生きられなかった時代の中で、奔放な蕗子と、仕事で自立する明子は友情を育む。石井が79歳になって描いた自伝的な青春物語。著者の分身といえる明子は、戦前の生き生きとしたモダンガールであり、従来の石井桃子像のイメージを劇的に変える作品でもある。



画像:殺人鬼

山のトムさん

石井桃子/作 深沢紅子/絵 福音館書店 1978年

トシちゃんとお母さん、ハナおばさんとアキラ君の4人は、都会から山に移ってきた開拓農家。牛の出産を病気と勘違いしてしまうほどの素人だ。そんな一家に、ねずみ退治の期待をかけて一匹の仔猫がもらわれてくる。トムと名付けられた雄猫は、最初は頼りなかったが、成長とともに、心強い相棒になってくれた。 戦後の何もない時代に、石井が宮城で農場を営んだ実体験をもとに描かれた物語。



画像:折蘆

においのカゴ

石井桃子/著 河出書房新社 2014年

1950年代に発表した短編集。単行本未収録の作品もある。まだ貧しい時代を背景に、中学1年で、手間賃かせぎをして遠足代を貯めようとするが、家計に使われてしまう切なさなど、今では考えられない物語。おんぼろなバスを大切に思うさんちゃん、見えないお友だちと仲良くなった女の子に来る別れの時など、今の子どもには理解が難しいと思われるが、それでも捨てがたい魅力がある。

浦安市立図書館でよく借りられている本ベスト3【単行本】

「ちいさなねこ」

「ありこのおつかい」

「くいしんぼうのはなこさん」



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