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星新一

1926年、東京市本郷区(現在の文京区)生まれ。本名・星親一。
1957年、「日本空飛ぶ円盤研究会」の例会で柴野拓美と出会い、同人誌「宇宙塵」創立の一人となる。同誌創立2号に掲載した「セキストラ」が雑誌「宝石」に転載され、作家としてデビュー、日本SF界の旗手として後進を牽引する役割を果たす。ショートショート形式を得意とし、時事風俗や性・殺人の描写を避け、誰もがわかりやすい文章を用いることで、年月がたっても繰り返し読まれる作風となっており、特に小中学生に絶大な人気を得た。
1983年に作品数が1,001編を超えるという偉業を果たした後も、より普遍的な表現にするなどの自作の改訂作業を生涯にわたって続けた。1997年12月30日没、享年71歳。
星新一が唯一ショートショートの後継者として指名していた江坂遊によるショートショートの作り方が、『小さな物語のつくり方』としてまとめられ、2011年10月樹立社より出版された。
画像:声の網

『声の網』 

角川書店 2006年

 メロンマンションの住人たちに、ぽつりぽつりとかかってくる不思議な電話。指示通り泥棒に入ってしまう若者と泥棒予告を受けた店主。誰も知らないはずの秘密を電話で告げられる女性。1章完結の連作短編集だが、各章がすすむにつれ、背後に潜む共通の存在が明らかになってくる。各家庭に電話が普及し、大型コンピュータが開発され始めた頃に書かれたにもかかわらず、現代のインターネットを取り巻く闇を予見したかのような物語だ。
 雑誌「リクルート」で1969年4月号から1970年3月号まで連載。

画像:妄想銀行

『妄想銀行』

新潮社 2002年

 エフ博士が長年の研究を完成させ作った妄想銀行。妄想銀行とはお金の代わりに人間の妄想を預かり取引をする銀行であった。罪の意識にさいなむ妄想、自分を馬だと思い込む妄想、博士に対する異常な愛情など、さまざまな妄想を保管しそれを必要とする人に提供するのだ。
 SF作家で評論家の石川喬司は、当時の『文芸年鑑』で「語り口に枯淡味が加わり、東洋的な“原思想者”としての素顔が現れてきた」と作風の変化を評価した。また、表題作を含んだショートショート集『妄想銀行』とそれまでの業績において、1968年に第21回日本推理作家協会賞を受賞した。「オール読物」1965年9月号掲載。

画像:おーいでてこーい

『おーいでてこーい』

講談社 2001年

 ある村のはずれに、突如としてできた底知れぬ深い穴。新聞記者や学者が調査に訪れたが、結局穴の正体は分からないまま利権屋の手に渡る。いつしか都会から道路が敷かれ、原子炉のカス、機密書類、別れた恋人との写真など、ありとあらゆるものが処分や証拠隠滅のために穴の中に放り込まれていくようになる。そんなある日、都会の建築現場で作業員が「おーい、でてこーい」という叫び声を聞き…。
 原子力基本法の成立や東海村での実験炉設置など、国内で原子力研究が活発になってきた頃の作品。短い中に放射性廃棄物や都市のゴミ処理問題、大量生産・大量消費社会の弊害などを暗示していた。同人誌「宇宙塵」15号(1958年)掲載。

画像:星新一

『星新一 一〇〇一話をつくった人』

最相葉月/著 新潮社 2007年

 様々な事業を展開する星製薬社長、星一(はじめ)。父であるその人から引き継いだものは、物事を多面的に捉える考え方と多額の借金、そしてワンマン社長を取り巻く正負の人脈であった。経営者として会社整理に奔走しながら、当時創世記であった日本SF界で執筆を始めると、作家・星新一の売出しが始まった。“星新一のショートショート”という形式が定着し、偉業1001話を達成するまでの努力の軌跡を、小松左京や筒井康隆らとの様々なエピソード織り交ぜながら描く。

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