その他
『百億の昼と千億の夜』
光瀬龍/著 早川書房 2010年
古代ギリシャの哲学者プラトンは、消滅した古代文明アトランティス王国の謎を探る旅に出る。やがて王国の末裔たちが住む村に辿りついたプラトンは、自らが王国の司政官オリオナエとなってアトランティスが滅亡する様子を幻視する。アトランティス王国は国王にして絶対者である惑星司政官の手によって生まれ、また滅ぼされたのだった。
歴史の中で、プラトン、悉達多(シッダルタ)、イエス、阿修羅王といった人物たちは、世界を創生しては破壊する絶対者=神といかにして関わり戦ってきたのかを壮大なスケールで描き、人類にとって神とは何かを追求した作品である。「SFマガジン」1965年12月号から1966年8月号まで連載。
「東京湾地下街」(『まぼろし綺譚』収録)
今日泊亜蘭/著 出版芸術社 2003年
スパイによって爆破され遭難した宇宙船から、360年後一人の男性が完全冷凍の状態で発見される。2358年の東京に連れ戻された彼は、高度な技術で蘇生させられた。この時代の東京は急速に科学が発展して機能的になっていたが、地上は度重なる核戦争により放射能で棲めないところばかり。人間は完全に分類され、1人の独裁者が支配する格差社会となっていた。
今日泊亜蘭は、日本初の本格長編SF小説とされる『光の塔』を1962年に上梓。本作は1963年7月号の「オール読物」で発表された。
『マイナス・ゼロ』
広瀬正/著 集英社 1982年
電機会社で技術部長として働く32歳の主人公・浜田俊夫は、18年前に託された遺言を守るために、当時暮らしていた町を訪れた。そんな俊夫の前に、18年間行方不明だった伊沢啓子がタイムマシンに乗って現れる。過去に何があったのかを調べるためにタイムマシンに乗った俊夫だが、目的よりも2年前の昭和7年にタイムスリップしてしまった上、思いもよらぬアクシデントに見舞われてマシンを失い、過去の世界に取り残されてしまう。偶然手に入った9千円、元の時代では300万〜400万に相当する大金と未来の知識を頼りに、帰る方法を模索する。「宇宙塵」90号(1965年)から10回に分けて掲載、1970年に河出書房新社より単行本が刊行された。
『日本SF全集・総解説』
日下三蔵/著 早川書房 2007年
「架空のSF全集の解説」をコンセプトにまとめられたブックガイド。星、小松、筒井など日本SF界を築いた作家から、菊池秀行、大原まり子といった新世代の作家まで43人(プラス別巻)の主だった作品を紹介。巻末には架空全集全44巻の収録作(!?)を掲載。2009年には姉妹企画として、1人1編ずつを収録したアンソロジー『日本SF全集(1・2)』が出版芸術社から刊行された。