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筒井康隆

1934年、大阪市生まれ。
1960年、弟たちとSF同人誌「NULL」を創刊。同誌に発表した「お助け」が同年に雑誌「宝石」に転載され、文壇デビューとなった。初期はブラックユーモアとナンセンスに満ちた作品を次々に発表。1967年からは中間小説誌にも進出し、三たび直木賞候補となった。1980年代になると『虚人たち』『虚構船団』など実験小説の方向に踏み出す。1993年に、高校教科書に収録された「無人警察」について日本てんかん協会が出版社に抗議をしたことに端を発して「断筆宣言」をするが、1997年に断筆解除。2000年には『わたしのグランパ』で読売文学賞小説賞を受賞している。
画像:48億の妄想

『48億の妄想』

文藝春秋(文春文庫) 1976年

 テレビの影響力が強大になり、交通事故も政治も裁判もすべてテレビ放映が前提で人々が生きている時代。全国に設置された小型カメラは、あらゆる人間の一挙手一投足をつぶさに記録する。カメラに映ることを常に意識する大衆と、過剰な演出で番組放送を続けるテレビによって、社会は擬似イベントの様相を呈していた。やがて、マスコミがテレビのためのイベントとして日韓海戦を起こそうとするが、戦争は現実に…。
 この作品が書かれた1960年代は主たるメディアがラジオからテレビへと転換していく時代であった。現実と虚構の境を曖昧にするテレビの性質と、それに振り回される人間の姿を描く。1965年書き下ろしの長編第1作。

画像:東海道戦争

『東海道戦争』

中央公論社 1994年

 ある日ラジオから、戦争が起こったことを知らせるニュースが聞こえてきた。大阪に住む小説家の主人公は外に出てみるが、断片的な情報ばかりで、どことどこの戦争なのか、原因が何なのか、いっこうに判然としない。やがて、大阪と東京が、「お互いがお互いを攻撃するから」という理由で戦争が起こっていることを知り、愕然とする。
 大衆の望む幻想を作り出すマスメディアと、その情報に左右される大衆が引き起こした戦争。情報化社会の落とし穴を鋭く描く本作は、1965年に「SFマガジン」に発表された。

画像:カメロイド文部省

『カメロイド文部省』 

徳間書店 2003年

 文学という概念のない辺境の惑星‘カメロイド’の文部省から小説を書いてほしいと頼まれた主人公。小説などさして興味はなかったが、報酬につられ、勝気で強欲な妻を携えカメロイドに赴く。ところが、カメロイド文部省の大臣に小説の内容をいくつも提示するが、不謹慎だ低俗だと、ことごとく却下されてしまう。価値観の相違から言い争いが始まり、ついには惑星からの脱出を試みようとする主人公を警察が取り囲む。すると妻は思いもよらない驚きの行動に出る。言葉遊びで笑いを誘う、筒井康隆ならではのSF。1966年「SFマガジン」に掲載された。

画像:時をかける少女

『時をかける少女』

角川春樹事務所 1997年

 理科室の掃除を深町一夫らと終えた芳山和子は、ひとりで道具を片付けようとした理科実験室でガラスが割れるような音を聞く。訝る和子は実験室へ入ると、甘いラベンダーの香りがし、やがて意識が遠のいた。この後、交通事故にあいそうになった和子は時をさかのぼる体験をする。
 現在に至るまで何度も映像化されたジュブナイル小説であり、特に最初のドラマ「タイム・トラベラー」は脚本家・石山透が続編をつくるというほど人気が高かった。1965年から66年にかけて「中学三年コース」および「高1コース」に連載された。

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