科学が急速に発達した19世紀末から20世紀初めのヨーロッパでは、「動物が口をきき、 妖精が登場する非現実な物語は、子どもたちを堕落させる」といった、昔話を否定する 動きがありました。反面、ロマン主義への傾倒のなか、目に見えない世界を魅力的に 描き、ファンタジーの大切さを知らしめた巨人たちの登場が、その流れを変えました。 遠く日本では、東北の風土の中から宮沢賢治が登場します。 彼らの独特の世界は、今も色褪せることなく、人々を魅了し続けています。
ハンス・クリスチャン・アンデルセン(1805〜75)
「人魚姫」「おやゆび姫」「雪の女王」など、アンデルセンの作品と知らなくても 誰もが読んだことがある多くの創作昔話を生み出した。 デンマークの貧しい靴職人の家に生まれながら、作品の成功により故郷の名誉市民 にまでのぼりつめたその生涯は、自作の「みにくいあひるの子」にも例えられる。
ルイス・キャロル(1832〜98)
本名チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン、イギリスは、オックスフォード大学の 数学教師。大学の同僚の子どもたちと遊ぶ中で、少女アリスに語った物語が不朽の 名作『不思議の国のアリス』となる。ことば遊びの楽しさと、奔放なイメージに満 ちたこの作品を超える作品は、以降一つもないといってよいほどの独創性に満ちて いる。
宮沢賢治(1896〜1933)
岩手県花巻市の恵まれた家に生まれ、盛岡高等農林学校を卒業。その作品は、 生前はほとんどかえりみられなかったが、死後、弟青六の努力により、整理・発表 されることで急速にひろまった。仏教への熱い信仰と、豊富な科学知識に満ちた 頭脳から、あふれ出たイメージから『銀河鉄道の夜』『よたかの星』『注文の多い 料理店』など、清冽で比類ない作品が生み出された。