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赤系

赤は日本語をはじめ、多くの言語における最古の色名のひとつであり、顔料や染料として人類が最初に知っていた色である。日本語での原義は「明け」の意を持ち、くろ「暗」の対をなす言葉であったという。それに対し、他の言語では血に由来するものが多いとされている。
藍と共に最古の染料のひとつであるアカネで染めた「茜色」や「緋色」、紅花で染めた「紅」、硫化水銀を主成分とする顔料「朱色」が代表格である。
古代日本では、赤い色を染める植物染料は主に茜であったが、七世紀頃に詠まれた万葉の古歌の中にはすでに紅花染めが登場する。大陸から渡来した紅花は、平安時代には非常に高価な染料であった。しかし当時の人々の紅染への憧れと愛着は、この時代に濃淡さまざまな諧調の紅染を生みだすことになった。殿上人の華麗な装束に用いられたそれらの紅染は、日本の四季を飾る花々の名前を借りて形容され、その風情豊かな色名は、王朝文学の中にひときわ優雅な彩を添えることになった。
また、鉱物顔料である朱、および弁柄も、太陽や炎を神と崇めた古代日本人には重要な色とされてきた。古くは縄文時代の朱塗りの土器や法隆寺の「玉虫厨子(たまむしのずし)」などに見られるほか、朱印は天皇の玉爾をはじめとする権威の象徴であった。
日本の工芸品に見られる赤としては、鮮やかな朱漆の漆器は言うに及ばず、酒井田柿右衛門が創始した赤絵付けの焼物や、幻の切子といわれる薩摩切子の銅赤をはじめ、様々な工芸品の中でそれぞれ独創的な赤が作り出され、用いられてきた。
日本人にとって赤とは、生命・神・権力の象徴として、特別な色であるといえよう。
画像:漆はジャパンである

『漆はジャパンである』

北國新聞社編集局/編  時鐘舎

漆はウルシノキの樹液を採取して透明に精製し、顔料を加えることで、朱と黒の優れた塗料となる。強く美しい漆の艶と色は、日本人のみならず世界各地にもファンが多い。漆器は、漆を作る職人、木地を作る木地職人、塗りを繰り返す塗師(ぬし)、漆器を販売する塗師屋など、多くの人の時間と手間を経て、使い手の手元に届くのだ。
本書は漆の魅力を、縄文の漆器、武具、蒔絵などの歴史に探り、現在、未来に向けて漆に関ろうとする人々を、産地に密着して紹介する。
伝統工芸だから保存するのではなく、漆を愛する人々に日々新たな命を吹き込まれ、「日本の美」として生き続ける漆。漆を見る目を新たにさせられる本である。

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