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白・黒系

白と黒は、いろどりの無い色ということで無彩色といわれる。しかし、白と黒の間にも、無数の色の段階があり、明と暗の両極端を表す色名でもある。なかでも明るく、にごりのない色が白色といわれ、純粋な白の感覚を表す色名が純白である。和歌の枕詞「しろたえ」は、木の皮の繊維で織った布のことで、現在の純白とはほど遠い色であり、漂白技術が発達するまでは素色も白色も違いはなかったようだ。しかし、清浄無垢や潔白を表す神聖な色として白は特別な存在となり、顔料に「鉛白」や牡蠣の貝殻を砕いて造った「胡粉」が、白粉として愛用された。焼き物では、半ガラス質の鉄分の少ない石を原料とする磁器の白磁が一番白く、江戸時代には伊万里の磁器が白い器として日常的に使われるようになった。 白の対極にある黒も同様に古い。黒は常に他の色名の反対語であり、死、不幸、闇、悪などの否定的な意味を象徴する。黒が、高級でシックな色として評価されるようになったのは、色に関する制約が消滅した現代になってからの傾向であろう。しかし、墨蹟や水墨画のように、日本では黒の美しさが昔から理解されていたものもまた事実である。仏教界では黒は何色にも染まらぬ不動の色として僧衣の色ともなっている。漆塗りの黒色は、乾いて白っぽくなることのない、永久的な濡れ色の黒であり、これ以上に黒い色は望めない真の黒である。純黒ともいうが一般的には漆黒と呼ぶ。日本の伝統文化における黒い色の美は漆黒に極まるといえる。
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『白』

原研哉/著 中央公論新社

「白」は何色にも染まり、汚れやすく、きれいなまま維持することが難しいため、私たちはそのはかなさと美しさに惹かれる。
本書には、無印良品のアートディレクターである著者の、「白」を中心としたデザインへの思いが熱く語られている。 「白」という色は印象が弱いが、空白を作り、透明、不透明、重み、軽さが特徴である。それらが共鳴しあい、他の色との対比色や背景色となることで輝きを増す。この「白」の持つ美学が、繊細さ、簡素さを生み出し、日本の建築・空間・書物・庭に反映されている。 『白があるのではない、白いと感じる感受性があるのだ。白いと感じる感じ方を探るのだ』の言葉に、日本文化の美意識を再確認する本である。

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