浦安市立図書館

茶系

茶の色は自然界のなかにたくさん見られる。樹木の幹、土の色は普段の暮らしのなかでおのずから眼に入ってくるものである。日本建築のなかにもふんだんに木が使われている。食事のときに用いる焼物の器も釉薬をかけない素焼のものは、赤茶あり、焦茶ありと一枚の皿のなかに茶の五彩を秘めているようである。  古来から、土、草、木の皮などの煮汁で染色した茶色はたくさんあったが、茶色という色名として定着したのは、日本人がお茶を飲む習慣をもつようになってからのことである。室町時代の終わりから喫茶の習慣が広まり、それを社交的な儀式とした茶道が定着した頃から茶色と色名がつけられた。  江戸時代には、庶民の間に茶の色とその色を愛好する流行が生まれ、「四十八茶百鼠」と云われたように茶色は四十八色あったと伝えられる。  「茶色」の中間色を合わせることにより、原色系の色をふんだんに使っても軽薄にならず、「いき」「渋味」の美意識に適う色として、縞柄、格子柄などの着物に用いられ、浮世絵、錦絵、役者色などにも広がっていった。当時、人気のあった歌舞伎役者團十郎が、柿渋と弁柄で染めた「柿色」の衣装を狂言に用いたことから「團十郎茶」といわれるなど、様々な茶色の使われ方をみることができる。  茶色の流行は、身近な鳥にも及び鶯茶、鳶茶、雀茶、また、目で楽しむ和菓子の色彩から羊羹色、小豆色と数多くの色名がつけられた。  工芸としては、自然のままの土の色で焼き上げた陶器の信楽焼、備前焼、瀬戸焼や竹細工などに、派手さはないが落ち着きのある、さまざまな茶色を見つけることができる。
画像:土のコレクション

『土のコレクション』

栗田宏一/著 フレーベル館

土の色は黒か茶と思っていた。だが、この本のページをめくっていくと、目を見張るほど美しい色の土があることに驚く。
虹色の土、白い土、黒くてホクホクした土、粘土質の土、火山の影響を受けた土、温泉の近くで見つけた土、鉱山の近くで見つけた土。本書は、著者が10年かけて北海道から九州・沖縄までの1万種類の土を集め、写真と文で紹介したものである。
土の表面は自然の芸術家である。古代より、この土から鉄製品や焼き物、染料、絵の具などを作り、生活を営んできた人間の創造の偉大さを感じる。児童書だが、大人も楽しめる本である。

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