黄系
黄という色は、暖かい、明るい、陽気といった印象がもたれている。黄という文字は「光」と「田」の含意文字で、光り輝く田圃の色であり、黄色は自然の中で生命の輝きを感じさせる色といえよう。
古代中国で確立されたといわれる五行思想では、黄は「木、火、土、金、水」の真ん中の土にたとえられている。国の源を作った三皇五帝伝説において、第一と崇められた黄帝は、人民の文明生活に大いに寄与したといわれ、神話的伝説の王として祭り上げられた。中国では黄色は戦国時代まで皇帝の色であり、最も高貴な色として尊ばれたのである。
日本では聖徳太子の冠位十二階には黄、濃黄、薄黄が含まれていた。ところが、大化三年の改正では黄色は冠位から消えてしまっているばかりか、『日本書紀』には「天下の百姓をして、黄色の衣を服しむ」とあり、黄色が尊重されていたとはいえない。しかし、高松塚古墳の女人像と男子像は黄の衣装で描かれ、正倉院には入子菱文綾、亀甲亀花文黄綾などの美しい黄色の裂が収蔵されている。
また、経典の写経には手漉和紙が用いられたが、その多くはミカン科落葉樹の樹皮を用いた黄蘗で染められた。『正倉院文書』には黄紙、黄染紙、黄麻紙などの表記も数多く見られる。ほとんどの和紙が黄蘗で染められたのは黄蘗には防虫効果があるためで、あわせて黄色という色が墨の色を引き立たせるということもあったのであろう。平安時代には歌集用に優美な料紙が作られ、貴族たちの生活を彩った。染料の伝統は今に続き、植物染料の和紙が静かな人気を呼んでいる。
代表的な黄色の染料には、黄蘗の他に、イネ科多年草の刈安などがあり、八丈島に多く生育する「八丈刈安」は、この島で織られる黄八丈の色として知られる。黄色系の色にはこのほか、鬱金色、山吹色、支子色、柑子色、女郎花色、卵色、黄金色、黄土色などがある。
『日本のウランガラス』
大森潤之助/著 里文出版
ウランガラスとは、微量のウランを溶かし込んだガラスのことであり、最大の特徴は紫外線による蛍光である。ウランを含むガラスは黄色であるが、光に当てると緑色の強い蛍光色を発し、黄緑色のガラスになる。また青色系の色を呈するものもある。ウランガラスの名称もなかった戦前の日本では「新青」が通称であり、「琥珀」「菜の花色」などとも呼ばれた。
日本のウランガラスは、日常の生活で使われる器物が多い。図版には花差しやコップ、鉢、置時計などが並んでいる。中には乳白濁のものあり、黄色や緑色に淡く発色する姿は大変美しい。